NTTデータ×ソフトバンク×パーソルホールディングス 人事データ活用特別座談会!組織を強くするデータドリブン人事(前編) 升田 真奈美氏 NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 データ&インテリジェンス統括部 課長 他
人の能力を最大化するために必要不可欠なPeople Analytics。
先進企業の活用実態や、推進における担当部門のリアルな声を知るべく、企業の人事データ活用を支援する NTTデータと、積極的な取り組みを進めるソフトバンク、パーソルホールディングスの3社で座談会を行った。
今回は前編として、各社の事例と質疑応答の様子をお届けする。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=編集部/NTT データ提供
配属後の活躍/非活躍を見通す「フィットスコア」
ソフトバンクでは2019年度まで、新卒社員の配属を本人の希望と採用面接官の評価に基づいて決定していた。その意思決定をサポートする目的で、2020年度から導入されたのが「新卒採用フィットスコア」。同社人事本部デジタルHR推進課の草苅輝氏は、「これが当社におけるピープルアナリティクスの出発点。実際の人事施策につながった最初のチャレンジです」と説明する。
「新卒者の配属候補先と本人の性格とのフィット度合いを、『性格フィットスコア』として数値化し、初期配属調整の“参考情報”に活用するという取り組みです。配属調整ではあくまで本人希望が第一。プラス、面接官が感じた適性を考慮しますが、それらだけでは決め切れない場合に判断を後押しする材料として、このスコアを位置づけています」
配属先とのフィット度合いを測るためには、それぞれの部門に新卒で配属されてパフォーマンスを出せるのはどのような性格の人なのかを、まず特定しなければならない。部門ごとに活躍層と非活躍層、定着層と非定着層を分析・定義し、性格特性に基づいてモデリングを行うが、草苅氏はその分析のプロセスに学ぶところが多かった、と振り返る。
「活躍層と非活躍層の定義や、分析する対象者の選定にはかなり神経を使いました。新卒者が就かない業務や、年代によって明らかにパフォーマンスが異なる部分があれば、それらに関するデータを除くなど、様々な調整をして分析の精度を高めてきました。
また、配属される部門によって求められる人材特性が異なるので、各部門の実情に詳しいHRBPとの密な連携は欠かせません。前提条件の刷り合わせから解釈の確認、分析の評価に至るまで常にディスカッションをしながら進めています。分析手法については、社内のデータサイエンティストにも協力を仰ぎ、技術面の担保に努めてきました」
スコアの運用開始から4年。効果検証も進められているところだ。
「フィットスコアが高い社員ほど、配属後に活躍しているという傾向が確認されました。配属先によっては、スコアが高いほど退職率は低いとの結果も。また、自己申告ベースではありますが、フィットスコアを利用して配属した社員はやりがいや、成長実感が高い傾向も見て取れました。本人の希望より、同スコアの方が活躍度や定着度と相関が強いのではないかと見ています」
今後も継続検証が欠かせないが、「適性を活かした採用・配置という課題に多少なりとも貢献できた」と、草苅氏は手応えを見せる。
ウェルビーイングの重要性をデータで裏付ける
ソフトバンクの人事データ活用の実践は、「新卒採用フィットスコア」だけにとどまらない。採用と配置に関する新たな取り組みとして、次の3点が草苅氏から示された(図1)。
「1つは職種ごとに活躍層の人物像を言語化すること。採用担当者間で言語化したものを共有して、明確な共通認識を持ちたいというニーズを受けて着手しました。さらに、その活躍者・活躍層の属性を、性格特性だけでなく、たとえば活躍者はどんな選考経路で入ってきた人が多いのかなど、様々な角度から分析しています。そして第3に、現場からの相談を受けた案件として、活躍者傾向の分析を新卒採用ではなく、中途採用とそのフォローに活かす取り組みも実施しました」