J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年01月号

AI から見る未来  AI時代に活躍するのは 情報精査・判断力、共感力のある人材

幅広い分野でAI(人工知能)の活用が進んでいる。
AIは人から仕事を奪うのでは、という懸念もあるが、日本IBMの行木陽子氏は「AIはベース技術。そこに施すソリューショニングによって、気の利く私設秘書にも、高度な知識を持った専門家にもなる」と示唆する。
AIとソーシャルウェアの専門家が予見する、近未来の働き方とは。


行木陽子(なめき ようこ)氏 日本IBM 技術理事
製造業の顧客担当のSEとして日本IBMに入社。その後、サービス事業部を経てコラボレーション・ソフトウェア製品を担当。コラボレーション分野における最新テクノロジーのエバンジェリスト(伝道師)として活動すると共に、次世代コラボレーション基盤の設計・導入に従事。2016 年技術理事に就任し、現在に至る。


[取材・文]=佐藤鼓子 [写真]=吉田 庄太郎

多様な人材活用にITが貢献

―IT企業の視点では、2030 年ごろの日本人の働き方はどうなっていると予測されますか。

行木

現在、既に課題である労働人口の減少がますます顕著になり、多様な人材の活用が企業の成長にとって必須になると予想されます。

特に今は女性の活躍が注目されていますが、もう少し幅広い視点で、国や地域を越えてさまざまな状況にある方に働きやすい職場を提供し、成長を図る企業が増えると思います。

私自身も、アメリカ・ヨーロッパ・アジア各国の社員と協業することが増えました。細かい議論が必要な際は対面で行うことが好ましいですが、ビデオ会議を使えばリモートでも表情を確認し合いながら議論を進めることができます。これからは、育児や介護に関わる人や海外勤務者でも働きやすいインフラを整えて、労働力を確保していく必要があります。

そうした、多様性に富んだ労働環境の実現に、ITが大きな役割を果たすと考えています。

情報解析で効果実証

―話題の「AI」は、多様な働き方の実現にどう貢献するでしょうか。

行木

AIの自律した学習力が生産性の向上へ大いに役立ちます。当社ではそれを「コグニティブ・コンピューティング」と名づけています。

コグニティブは「認知・認識」を意味します。システムが情報から学び、仮説を立て提案し、その経験を記憶してまた学習するという、人間の脳のように働くシステムです。

近年「AIは人間の仕事を奪うのではないか」とよく議論されています。確かに、AIが職場に入ってくることで、特定分野の仕事は減るかもしれませんが、時流に柔軟に対応して、やるべきことを見いだすのは人の役割です。

AIの機能は、複数の分野で、その実用的な効果が実証されています。例えば2016 年に、当社の意思決定を支援するコグニティブ・コンピューティング・システム「IBM Watson(ワトソン)」が、10分ほどで難症例を見抜き、医師に適切な治療を提案したことが話題となりました。Watsonが膨大な量の医学論文を学習し圧倒的なスピードで症例と照らし合わせたことで特殊なタイプの白血病だと分かり、正しい治療を施すことができたのです。

今後ますます、地道な情報収集や情報の解析をAIが担うようになり、人はその妥当性を判断して決定を下す行為を中心に働くことができるようになっていきます。

情報を精査し判断できる人

―ということは、人がその過程で試行錯誤する機会は減る、ということですか。

行木

それは場面によるでしょう。今はネットでどんな情報でも探し出せます。情報が溢れ過ぎて、どれを精査して使うかの判断が困難になっているほどです。

AIは、さらに手前の段階で、「この人が必要な情報はこういうものではないか」と考え、より適切な情報を探す手伝いをします。

したがって、情報の扱い方は大きく変わっていくでしょう。現在はメディアなど、情報の提供者が正しく発信し、情報を受け取る人はその信頼に基づき情報を扱っています。

しかしこれからは―インターネットの情報活用という面では既にその傾向が見られますが―情報を使う側がその精度を見極め、責任を持つようになるのです。たとえAIが99%の確率で「こうです」と助言しても、最終的な判断は私たち人間が下さなければなりません。

ですから、2030 年ほどの未来に求められる人材とは、情報にロジカルに向き合い、その情報が信頼に値するかどうかを精査して判断し実行する能力のある人です。

―情報を判断する側の専門性の高さも問われそうですね。

行木

特定分野に精通した、専門性の高い人は、情報収集側ではなく判断する側のグループにいるほうが効果的です。

さらに言えば、そうして情報を精査しながら、他人とコミュニケーションをとって結果を形にしたり、相手が何を考えているかを理解して判断したりといった能力が、個々に求められるようになるでしょう。意思決定力プラス、共感力ということです。

反復と自律で学習精度が向上

―例えば、人が会議に出ている間にAIが情報収集をしておいてくれる、といったことも可能になりそうですね。

行木

可能になるのは情報収集だけではありません。人がメールの文面を作成している間に、その内容に合ったファイルなどをAIが探し出し、リアルタイムで助言する、といったことも期待できます。

従来のコンピュータ言語やコードだけでなく、人が通常のコミュニケーションで使うナチュラルランゲージ(口語)に対応していれば、AI は人の発話やチャットにもすぐさま返答してくれるでしょう。

今まではインターネット上の膨大なデータをきちんと構造化して教え込まないと、コンピュータが処理できませんでした。詳細なプログラミングが必要だったのです。

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