第9回 ミドルシニア向けのキャリア形成支援 藤間美樹氏 積水ハウス 執行役員人財開発部長|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決ができない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。今回のテーマは「ミドルシニア向けのキャリア形成支援」。
ゲストに積水ハウス執行役員人財開発部長の藤間美樹氏をお迎えし、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=藤間美樹氏提供
会社を挙げて全社員にキャリア自律を促す
中原
長年頑張ってきた管理職の方々に対して、『元気のないシニア』『働かないおじさん』予備軍とは、なんとも失礼な話ではありますが、ミドルシニア社員のキャリア自律については、多くの企業が頭を悩ませています。
藤間
大切なのは、フォーカスをどこに合わせるかです。キャリア自律となると、どうしても個人にフォーカスを合わせた研修といったことになりがちですが、実際は職場環境や組織風土の方にフォーカスを合わせた施策でなければ無理があると考えています。
中原
個人を変えるな、職場をケアしろということですね。
藤間
はい。特に日本の大企業では、定年まで働き続けることがキャリア目標になっている人が多いです。また異動も会社が決めるので、社内ネットワーキングが巧みで、扱いやすく、その会社で生きる能力が高い人が出世するといったところがあります。そうした環境で長年働いてきた人に対して急に「キャリア自律を」と言っても困惑しますし、「50代を目前に、何をいまさら?」と反感を買われてしまうのも当然です。ですので、一部の社員だけではなく、全社員に向けて会社を挙げて行うことが大切です。これがキャリア自律、キャリア形成支援における大前提だと考えます。
中原
よくわかります。昨今「問題だ」とラベリングされるようになったミドルシニアは、突然降って湧いたわけではなく「組織ぐるみ」で生み出されたわけです。ならば、個人にどうこういうよりも、「組織を見直せ!」というのは、正しいと思います。
藤間
はい。弊社にも同様の課題はあるため、管理職、専門職向けにキャリア形成支援を行っています。ただ、ミドルシニアの管理職全員がそうなのではなく、キャリア目標を持ってイキイキと働いて活躍している方も少なくありません。そうした人は常に経営視点を持っていて、経営戦略をしっかりと理解し、毎期ごとに会社が向かっている方向性を意識しながら進んでいます。一方、そうでない人は、ただ目の前のタスク、業務の管理だけをやっていて、戦略について考えていないのです。まさに質問者の方が指摘しているように「やらなければならないこと」に振り回されるだけで来てしまったのではないかと思います。