J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

“Buzzword” から人材育成の未来を読み解く 第3回 デジタル人材はどこにいるのか?

いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。
第3回目では昨今、注目を集める『デジタル人材』とその確保について考えていきます。

Profile
川手 文佑氏 Kawate Fumihiro
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
ピープル・アドバイザリー・サービス マネージャー

教育系や会計事務所で営業部門、人事・経企の管理部門に従事後、コンサル業界へ入職。
戦略立案から実践・実行までワンストップに対応。カウンセラー資格を有し、ニーズをとらえたサービス提供が真髄。

バラバラすぎる“デジタル人材像”

コロナ禍により、「多くの業務をリモートで完結できるようにせねば、既存事業の成立が危ぶまれる」と考える経営者が増え、DXへの関心がいっそう強まっています。しかし、設備や組織の在り方を変えるだけでDXが順調に進捗するかといえば、話はそれほど簡単ではありません。私たちが支援している企業でも、「デジタルに強い人材が少なく、現場のDXが進まない」「データは集まるものの、分析し、打ち手を示せる人材がいない」といった具合に、DX を担う人材が不足していることへの課題意識が高まっています。「デジタル人材を確保するために施策を打ち出していこう」という号令もむなしく、協議が遅々として進まないといった相談も増えてきました。

混乱の原因はどこにあるのでしょう。様々な企業の協議に加わったとき私たちが感じるのは、デジタル人材の定義が人によってバラバラだということです。ある人は、「Excel の関数式、またはVBAやマクロを使いこなすスキルを備えた人材」と考え、またある人は、「膨大なデータを解析し、問題解決を図るデジタルサイエンティスト」と考えます。これでは、「デジタル人材が社内にいるor いない(または、充足しているor 不足している)」の議論さえ成り立たないでしょう。

筆者は、まずデジタル人材の定義とレベル感(階層)を定め、社内で共通言語化することを目指すべきだと考えます。全国各地に営業所をもつ、ある企業では、デジタル人材が足りないという認識は経営層において一致していたものの、協議では「非デジタル人材をデジタルが使える人材へ引き上げたい」という話と、「デジタル主導で課題解決できる人材を営業の最前線に配置したい」という2つの話が一くくりで語られていました。

どの階層のデジタル人材について話しあうかを決めなければ、全員が同じ議論の場に立つことはできません。そこでこの企業の協議に参加した筆者は、図1のような資料を提示し、「利用型人材」「課題解決人材」「価値創造人材」の3レベルに分けて考えるべき、と説明しました。

もちろん、企業ごとに事業戦略や社員のIT リテラシーに差があり、階層やその定義も違います。図1の3つのレベルが当てはまらない場合もあるでしょう。もし、デジタル人材の定義が各社共通だとしたら、企業の垣根を超えた一斉教育も可能となり、人材の確保はもっと進んでいたかもしれません。裏を返せば、「各社各様なデジタル人材の定義が必要とされる」という事実こそ、デジタル人材確保に時間がかかっている要因といえるのです。

確保のアプローチ① Make

ここからはデジタル人材の確保に向けたアプローチに話題を移しましょう。デジタル人材に限らず、企業の人材開発や人材採用においては、至るところで“Make or Buy”の二分法の議論がなされています。「社内の発掘・育成に比重を置く(Make)か、社外からの採用に比重を置く(Buy)か」という議論です。

まずは、現有人材から発掘・育成をすることでデジタル人材を確保するアプローチ(Make)について考えていきましょう。はじめに、どのようなデジタル人材をどのくらいの人数求めるのか、企業として目指す姿を設定します。「一部の専門職を数名選抜し、データアナリティクスのチームの組成に向けて育成する」「特定部署の社員全員をデータ分析ができるように育成する」などです。やみくもにデジタル技術の研修ラインナップを増やしたところで、求めるデジタル人材が勝手に、しかも多数育つといったことは、まず起こり得ません。目標をどのように定めるかによってアプローチは大きく異なってくるはずです。

次に、果たすべきミッションを育成対象者と共有します。デジタル人材の育成がうまくいっていない企業は、多くの場合、どんな能力を身につけてほしいかを対象者に明確に伝えきれていません。おかげで研修を実施しても学習が業務に活かせない、といった事態に陥りがちです。

では、どうすれば社員とミッションを共有し、学んだことを業務に反映してもらえるのでしょうか。今回は筆者が支援した企業の事例を通じて育成アプローチを紹介します。

この企業は人がコンピュータを操作して行う作業を、ソフトウエアによる自動操作によって代替するRPAを早くから導入しました。その結果、業務効率化が進み、大きな成果(約1,500人分の余力創出)を生み出しています。成果の一部を担うのは600人超の一般従業員たち。彼らは自身で開発したロボを利用し、新しい働き方を手にしています。「デジタル技術を用いて自身の業務を効率化する」というミッションを明確に認識しなければ決して到達できなかった成果でしょう。

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