J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年09月刊

連載 “Buzzword” から人材育成の未来を読み解く 第2回 データドリブン型の営業組織は DXを成功させるのか?

いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。
第2回目では昨今、注目を集める営業組織のデジタルトランスフォーメーションについて考えていきます。

Profile
千葉 友範氏 Tomonori Chiba
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング
Business Transformation Team Director

ビジネストランスフォーメーション ディレクター。
20年近いコンサルティングにおいて、テクノロジーとヒトの融合をテーマにUXデザイン、IoTなどのプロジェクトを多数経験し2019年より現職。
主な執筆に『いまこそ知りたい営業組織のDX』(翔泳社)。

営業パーソンは100万人減少した!?

少し衝撃的な見出しかもしれませんが、総務省統計局「労働力調査年報」によれば、日本の営業パーソンは、2000年ごろのピーク時から約20年間で約100万人も減少しています(図1)。

背景には、大量購入・消費に支えられた「モノ」ではなく、「コト(体験)」を重視するようになった時代の変化や、テクノロジーの進化、ECの普及など流通構造の抜本的な変革があると推測されています。

一方で国勢調査によると、「営業・販売事務従事者」、つまり内勤担当者は、2010~2015年の5年間で14万人(25%)増加しています。セールス・マーケティングやインサイド・セールスといった新しい職種が生まれたためでしょう。

業界再編や顧客ニーズの変化から顧客とのつながり方の見直しが求められるなかで、企業はいま、「営業・販売」とは何かを見直す岐路に立たされているのです。

こうした潮流において、営業組織のデジタルトランスフォーメーション(以下DX)は様々なBuzzword のもとに議論されてきました。「働き方改革」「BPR(既存の組織や制度の再設計)」「成果型報酬」、さらに「CRM(顧客関係管理)」や「SFA(営業支援)」、モバイルやクラウドなどに代表されるIT ツール(以下、Sales Techと総称)などです。

とはいうものの、Sales Tech によるDXはさほど進展していません。総務省「情報通信白書」のデータを見ると、日本国内の企業におけるCRM・SFA の導入は約30%程度と推測できますが、筆者は利用実態(定着レベル)は高いとは言い難いと考えています。ITR 社の調査によれば、SalesTech の導入について「うまく利用できていない」と回答した企業は、56%にも及んでいます。HubsSpot 社の調査でも、Sales Tech を利用しない理由について、約40%の企業が「手作業によるデータ入力」や「他のツールと統合できていない」など、使い勝手の悪さを上位に挙げ、多数の企業が「Sales Tech の導入によって業務時間が延びた」と回答しています。

これが、営業組織におけるDXの現在地なのです。

頑張ってもDXが進まない理由

Sales Techの導入には多くの人手と時間(労力)をかけて要件定義が重ねられ、利用促進に向けた現場のサポートも行われているはずです。それにもかかわらず、なかなかDXを成功裡に進められないのはなぜでしょうか。導入・サポートチームの努力が足りないのでしょうか。筆者はそうは思いません。課題を抱える企業には共通点があります。結局使われないデータ、「汚データ」(図2)が生成されていることです。

汚データ生成サイクルを克服する

この悪循環は、現場担当者の体験価値(UX)を大きく変えていないことに真因があります。日報などの営業支援ツール、SFA(Sales ForceAutomation)の導入を例に考えてみましょう。

そもそも営業現場の主な悩みは、競合排除ができないといった問題の他、「商談が商品紹介だけで終わってしまう」「うまくクロージングができない」といったお客様とのやり取りにあるといわれます。従来は営業マネジャーが同行し、具体的なアドバイスなどをOJT で行ってきましたが、昨今の働き方改革でマネジャー自身も効率化を求められ、営業同行や部下の指導にかけられる時間は少なくなってきています。モバイルワークや直行直帰の働き方を許容する制度が広がるなかで、営業(商談)の現場は、マネジャーにとってはもはやブラックボックスとなってしまったのです。

ブラックボックス解消に活用されてきたのが、SFAなどのSales Techです。担当者はいつ、どの顧客を訪問し、どんな商談をしたのか、ヒアリングしてきたBANTC(予算、権限、必要性、時期、競合)などを正確かつ、スピーディーに上司に日報で報告するよう訓練され、マネジャーはこの日報に基づき、OJT を行ってきました。また、営業研修を通じて、現場の課題解決(営業担当者の悩み解消)を試みてきた企業も少なくないでしょう。

とはいえ、こうした支援ツールやトレーニングの定着率は必ずしも高くないようです。

多くの場合、Sales Techを活用するには、現場がマネジメントに必要なデータを入力する必要があります。利用者目線というよりは、管理者目線=営業管理の視点が強いといえるでしょう。しかし、現場担当者にとっては、入力が手間となり、かえって残業が増えるという悪循環に陥ってしまう場合もあります。さらに、入力したからといって自分の営業実績が即座に上がるかというと必ずしもそうではないことも、Sales Techの定着を阻害する要因となっています。

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