J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

中原淳教授のGood Teamのつくり方 第14回 混沌から生まれた成長 ~コロナに向きあう看護師たちの経験と学び

不確実で先行きが見えない状況で、チームはどのようにして危機を乗り越え、前に進んでいけばいいのでしょうか。看護師チームの危機対応をとおして考えます。

浅香 えみ子(あさか えみこ)氏
1987年、東京医科大学医学部附属看護学校卒業後、獨協医科大学越谷病院に入職。
法政大学卒業、東京女子医科大学博士課程修了、富山大学博士課程修了。
獨協医科大学越谷病院副看護部長を経て2020年4月より東京医科歯科大学医学部附属病院看護部長。

中原 淳氏 (Jun Nakahara)氏
立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。
著書に『職場学習論』、『経営学習論』(共に東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『駆け出しマネジャーの成長論』(中央公論新社)など多数。
研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun

取材・文/井上 佐保子 写真/東京医科歯科大学医学部附属病院提供、研壁秀俊 

2020年3月25日。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の急増により、東京都は都下の病院に入院医療体制の整備を要請しました。東京医科歯科大学医学部附属病院でも受け入れが決まり、対応が迫られていました。同院は病床数753床、15の診療科をもつ特定機能病院。約990名の看護職員が在籍する看護部で、陣頭指揮を執ったのは今年4月1日に着任したばかりの看護部長、浅香えみ子氏です。先の見えない状況で危機に対応するチームをどうつくっていったのでしょうか。

看護部長着任初日から緊急体制へ

中原:

新しい職場に移られ、早々にコロナ対応とは、大変でしたね。

浅香:

はい。着任初日、通常ならば自己紹介などの場になるはずが、院内全体のコロナ対策会議への参加が初仕事となりました。

中原:

浅香先生としてはメンバーの顔も名前もよくわからないまま、指揮をとらなければならなかったわけですよね。最初にしたことは?

浅香:

まず行ったのは病床の確保です。ハイケアユニット(高度治療室)に重症患者を受け入れる病棟をつくるため、空いている一般病床を見つけ、ハイケアユニットの患者さんを安全に移動させるよう促しました。

その後も受け入れ患者数を増やしていく方向でしたので、受け入れ病床を増やしつつ、他の病床を閉じていくプログラムを進めていきました。といっても、着任直後で何もわかっていなかったので、3人の副看護部長から話を聞くことから始めました。また、初動での細かい動きや指示は副部長に任せるようにしていました。

中原:

コロナ対応の病棟をつくるうえでどんなところが難しかったですか?

浅香:

課題は大きく2つありました。1つは看護師たちをどこに配置し、どのような体制で看護に当たってもらうのか、ということ。もう1つは4月から入ってきていた100名ほどの新入職者への対応です。

中原:

コロナの患者さんへの対応は通常の対応と異なるのでしょうか?

浅香:

陽性患者さんは重症者として看護する必要があるうえ、未知の病気なので手探りで対応しなければなりませんでした。特に一般病床から新しい病棟に来た看護師は、一からの学び直しになったかと思います。

初顔合わせのメンバーたち

中原:

看護師さんたちの間には動揺が走ったのではないですか?

浅香:

戸惑いは大きかったと思います。「私たちのことわかってるんですか?」と問い詰められたことも。

中原:

それはやはり恐怖から?

浅香:

そうですね。自分が感染を広げてしまうのではという不安、重症者に対応できるだろうかという不安も強かったでしょう。新しい人間関係の中で働くことへの不安もあったように思います。

中原:

新しい人間関係というと?

浅香:

看護師は病棟ごとに結束が固く、病棟をまたぐ異動は清水の舞台から飛び降りるようなものなのです。当然ながら内科と外科では文化がまったく異なりますし、同じ内科でも病棟ごとのローカルルールのようなものがあったり、大事にしていることが違っていたりしますから。

通常は一人ひとりに丁寧に面接を行い、意向を聞いたうえで配置転換するのですが、今回はいきなり異動となってしまった。ストレスは大きかったと思います。

あえて新人たちを現場に配置

中原:

新入職者についてはどう対応されたのですか?

浅香:

一般病棟はもちろん、コロナ対応の病棟にも配置しました。病院によっては、新入職者を自宅待機させているところもあったのですが、今後もコロナ対応が続くのであれば、途中から新人を合流させることが難しくなるかもしれないと。手取り足取り教えられないとしても、現場の空気感だけでも共有してもらおう、ということになったのです。賛否両論あったと思いますが。

中原:

特にコロナ対応の病棟は混乱したでしょうね。

浅香:

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