J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年03月刊

特集│CASE 2 味の素 社員のセルフ・ケアを支援 「知る」「考える」「動く」で 自然に健康になる健康経営

2003年に「健康推進センター」を設立するなど、早くから従業員の健康に関する取り組みを進めてきた味の素。
健康に関する全社員対象の面談は約20年の歴史があり、社員自身の健康への意識を高めている。
「る・る・く」に基づいたセルフケアのサポートについて、話を聞いた。

浅井 誠一郎氏
味の素 人事部 労政グループ 兼 健康推進センター(健康経営担当)

味の素株式会社
1909年創業。世界一のアミノ酸メーカーとしての高品質アミノ酸の独創的な製法・利用法の開発を通じて事業領域を拡大し、国内外で「食品事業」、「アミノサイエンス事業」を柱とした幅広い事業を行う。
「Eat Well, LiveWell.」をコーポレートメッセージとし、130 を超える国と地域でグローバルに事業を展開する。
資本金:798億6,300万円(2019年3月31日現在)
売上高:1兆1,274億円(2019年3月期)
連結従業員数:3万4,504名(2019年3月31日現在)

[取材・文]=村上 敬

“心身の健康“が成長ビジョンの土台

1908年に池田菊苗博士が発見した「うま味」。その成分であるグルタミン酸がアミノ酸の一種であることから、味の素は創業以来、アミノ酸を起点として幅広い事業を展開してきた。創業の志は、「おいしく食べて健康づくり」。まさに健康のエキスパート企業だ。

当然ながら、健康経営への取り組みも早い。社内に「健康推進センター」を設立したのは、2003年。同時に健康管理規程を策定して、社員にセルフケアで健康づくりをすることを求めている。世間で「健康経営」という言葉が使われ始めるずっと前から、味の素は従業員の健康を経営テーマの1つにしてきた。

同社における健康経営の位置づけについて、人事部労政グループ兼健康推進センターの浅井誠一郎氏はこう話す。

「味の素はグローバルトップ10になることを成長ビジョンとして掲げています。そのために『自律的成長』『働きがいの実感』『多様な人財の共創』を軸とした人財マネジメントを行い、個人と会社の成長の同期化を通じたイノベーションを実現していく。そのベースとなるのが、『心身の健康』、つまり健康経営です(図1)」(浅井氏、以下同)

健康経営を進めるにあたって立てた方針が、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」だ。基本は、社員のセルフ・ケア。自分自身でバランスの良い食事や適度な運動、良質な睡眠を意識した生活をしてもらい、会社はあくまでもそれを支援する立場と位置づけた。

「社員のセルフ・ケアに関しては、『知る』『考える』『動く』から文字を取って、『る・る・く』という標語をつくりました。社員は健康に関する知識を得たり、自分の健康状態を知る必要があります。知れば、食事など意識して動くようになり、自分の健康状態がどうなったのかを考えて、また知るというプロセスに入っていく。社員はこのサイクルを自律的に回し、会社は社員がサイクルを回しやすいように環境を整えます(図2)」

実は『る・る・く』は、同社で健康経営より一足先に始まった働き方改革のときにつくった標語である。だが、自律的にサイクルを回すという考え方はどちらも同じ。同じ標語を活用することで、いっそう社員に浸透しやすいようにしたのだ。

従業員約4,000人との面談を約20年継続

具体的にどのような取り組みで社員のセルフ・ケアを支援しているのか。浅井氏が「すべてのベース」として位置づけているのが、全員面談だ。

同社の健康推進センターに所属する産業医9人と保健師・看護師13人が、4,000人以上にのぼる全従業員と年1回、1人30分かけて面談を実施。健診やストレスチェック、その他のアンケート結果をもとに、それぞれの価値観や生活スタイルを尊重した保健指導が行われる。

「面談が社員のセルフ・ケア能力を向上させ、病気の早期発見・早期予防、さらに自覚のない不調の発見や対応につながることはもちろんですが、その他、健康推進センターと社員の信頼関係が構築されることも大きなメリットです。毎年面談をしていると敷居が低くなり、全員面談以外のときでも気軽に健康について相談できるようになります。実際、2017年度は全員面談の他に保健師・看護師への相談が2,100件以上ありました。本人の健康だけでなく、家族の健康や部下の健康など、幅広く相談するようになってきたのも、全員面談を長年積み重ねてきた成果だと考えています」

全員面談がスタートしたのは2001年。健康経営が注目を集める前から地道に取り組んできたからこそ、現在、全員面談が健康経営を支える基盤として機能しているといえる。

ちなみに全員面談を支える健康推進センターは、全国6カ所(本社、東京、川崎、東海、大阪、九州)に設置。保健師や看護師は自分のセンター内で活動することが一般的だが、同社の各健康推進センターは並行して全国横断型チーム活動を行い、他のセンターとも積極的に情報交換をしている。保健スタッフのこうした意識の高さも、社員から信頼される一因になっているのだろう。

全員面談の中身を充実させるため、アプリの活用も始めた。同社は健康アドバイスアプリ「カラダかわるNavi」を18年8月から導入。これは食事や睡眠などのライフログを記録してセルフケアに生かすためのアプリだが、面談時にこの情報を保健師と共有すれば、より効果的な指導が可能になる。

ナッジ理論を活用して「自然に健康に」

個別の施策を見ていこう。味の素はメンタルヘルスや受動喫煙対策・禁煙の取り組み、女性の健康支援、海外赴任者の健康支援など、幅広い取り組みを行っている。それぞれ充実しているが、特徴的な施策として、ここでは「適正糖質セミナー」と「MyHealthランチ」を紹介する。

適正糖質セミナーは、生活習慣病予防のために2017年から社内で開催しているセミナーだ。対象は、生活習慣病予備軍(HbA1c5.6~6.4およびBMI25以上)の従業員。昼休みに対象者を会議室に集めて講義を行う。参加は自由だが、弁当が無料で支給されるというのもあり、対象者の大半が自主的に参加するという。

「セミナーで話すのは、血糖値スパイク、つまり食後高血糖についてです。食後高血糖は通常の健康診断で検査しないのであまり意識されていませんが、実は血管にダメージを与えるリスクがあります。そこで実際にお弁当を食べた直後に指先採血を行い、スパイクが起きていることを体感してもらったうえで、糖質を適正にコントロールすることの大切さやその方法を解説します」

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