J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

CASE.1 NTTデータ “How to study English”ではなく、 “Why study English”の理念 語学習得の真の意味を全社員に問い続ける

国内システムインテグレーション最大手のNTTデータ。
大型M&Aにより大きくグローバル化を進めており、すでに世界41カ国以上で事業を展開している。
「語学のみの研修体系は設けていない」という同社の独自な英語教育方針について聞いた。

NTTデータ
設立1988年。NTTグループ主要5社の1つ。データ通信やシステム構築事業を
行うシステムインテグレータ会社。
資本金:1425億2000万円(2014年3月31日現在)、連結売上高:1兆3437億円
(2013年4月1日~2014年3月31日)、従業員数:約7万5000名(グループ全体/
2014年1月現在)
[取材・文]= 山本信幸 [写真]=編集部

●語学教育の大前提 使う機会を増やす

NTTデータでは、英語をはじめ、語学に特化した研修体系をあえて設けていない。その理由を人事部グローバルHR 担当部長の田中一郎氏は次のように説明する。

「英語を学ぶためのツールは社外にいくらでもある。ですから、単純な“How to study English”には重きを置いていません。それより“Whystudy English”、つまりなぜ英語を学ばなければならないか、について社員に気づきを与えるようにしています」

中期経営計画「2012年度~2015年度:4ヵ年」の中で「グローバルビジネスの拡大・充実・強化」を打ち出しているNTTデータ。2008年からは積極的な海外M&Aを行い、ERP(統合基幹業務システム)事業を中核事業とするドイツのアイテリジェンス社をはじめ、多くの海外有力企業をグループ内に取り込んだ。その後、海外事業を「北米」「EMEA(Europe:欧州、Middle East:中東、Africa:アフリカ)」「APAC(Asia Pacifi c)」「中国」の4つの地域に再編して、横断的な連携を強化している。

現在は世界41カ国以上で事業を展開しており、グループ社員約7 万5000人のうち約4万3000人が日本人以外の社員だ。売上高1兆3000億円(2014年3月期)の22%が海外グループ会社の売り上げである。

今後はさらに海外事業比率を高め、2020 年には海外売上高比率50%(海外売上高1兆円)に引き上げるビジョンを掲げている。それだけに、「日本社員のグローバル対応力強化」がまさに急務となっている。

ただシステムインテグレーションを手がける同社のビジネスモデルは、製造業のように国内で開発・生産した同一の製品を広く海外で販売する、というものではない。現地顧客への直接的な営業や折衝、要件定義はその国の事情や商慣習を熟知している各国の社員が担当する。

そのため、社員一人ひとりがめざすべきは、「①国内外でも通用するような職位に応じた業務遂行力」「②職務に応じた専門力」に加えて、「③それらを文化の異なる環境でも発揮できるグローバル対応力」を備えた「グローバル人材」としている。

だからこそ、大前提として同社社員には仕事のプロであることが求められる。語学力はもちろん重要だが、その一要素という位置づけだ。冒頭の「語学に特化した研修体系は設けていない」という田中氏の言葉は、こうした背景に根ざしている。

力を入れているのは、英語を学ばせることではなく、「英語を使わざるを得ない機会」を増やすこと、と田中氏は言う。各階層や事業分野別に、海外研修を展開。日本語も日本流発想も一切通じない場を体験させ、自ら努力する気持ちに火をつける仕組みをつくっている。

● 気づきを与える研修1 新入社員を中国、インドへ

中核事業の公共金融分野を担うパブリック&フィナンシャル(P&F)カンパニーでは、2012年から中長期的な人材育成施策の一環として、入社2 年目の全社員を対象に海外派遣研修を実施している。派遣先は中国、インド、インドネシア、ベトナムのグループ会社。期間は約2週間だ。

目的は、現地の文化やビジネス環境を理解し、現地社員とコミュニケーションを図りながら、日本と現地との仕事の進め方の違いを認識すること。現地のグループ会社や大学生などとのディスカッション、オフショア開発体験といったカリキュラムが組まれている。営業系人材は、顧客先に同行したり市場調査をしたりすることもあるという。

2013年度からはベトナムやインドネシアなど東南アジアでの研修に、ボランティア活動を取り入れた。英語と日本語で日本の文化やIT技術、さらにITを使った遊び、折り紙・習字などを教える。また、村の公民館で同社の技術について英語でプレゼンテーションするなどし、現地の人たちと交流を深めている。

● 気づきを与える研修2 世界のリーダーと議論する

統括部長クラスの幹部を対象とする人材育成プログラム「グローバル・リーダーシップ・プログラム(GLP)」では、高度な語学力が要求される。世界各国のグループ企業から次世代グローバルリーダー層がドイツの自社研修施設に集まり、1週間、寝食を共にして、グループ戦略について討議する。人脈形成やグループシナジー創出も大きな目的だ。2014 年は、総勢23人、日本からは8人が参加した。

「GLPはこれで終わり、というわけではありません」(田中氏)。ドイツ・セッションの後は、電話会議主体でのバーチャルワークが半年間、続く。海外CEOとのラウンドテーブルを経て、東京に参加メンバーが再び集合。ドイツで設定した課題に対する最終報告セッションを行う。

こうして、次世代リーダーたちの国際感覚が磨かれていく。「彼らが必ずグローバルな成長の原動力となってくれる」と田中氏は期待する。

とはいえ、日本からの参加者には英語での議論に不慣れな人も多い。研修の効果をより高めるために、訪独の前には事前セッションが準備されている。これは、英語力そのものよりも、英語圏でのコミュニケーションスタイルを強化することが目的だ。2 時間の早朝セッション6回に加え、前後にはアセスメントも実施。さらに、その間には電話による個人セッションを挟む。

「電話では約20分間、英語で話し続けなければなりません。私たち日本人は対面であれば相手の表情や雰囲気から言いたいことを察して話すことができますが、電話では空気が読めない。だからこそ本当の英語コミュニケーション力が問われるのです。おかげで英語の電話会議でも物怖じしなくなり、仕事が楽になったという声も届いています」(田中氏)

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