J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年01月刊

私のリーダー論 仲間とプレイグラウンドを守る “ガキ大将リーダーシップ”で 随所に主となる組織をつくる

会社名に反して“「リース」の先へ”をビジョンに掲げるのは、2016年からリコーリースの社長を務める瀬川大介氏である。
リコー出身だが、リコー関連以外への事業領域の拡大、そしてリースの先を目指すうえで、社員との直接対話からつかんだ課題をもとに、
数々の改革や組織能力の向上策を行ってきた。
その内容と背景とは。

瀬川大介(せがわ だいすけ)氏
リコーリース 代表取締役 社長執行役員

生年月日 1954年7月21日
出身校 中央大学大学院 商学研究科
主な経歴
1980年 リコー 入社
2004年 総合経営企画室長
2005年 執行役員
2006年 経理本部長
2009年 InfoPrint Solutions Company,LLC CEO
2013年 リコー 常務執行役員
2014年 経営革新本部長
2015年 日本統括本部長
2015年 コーポレート統括本部副本部長
2016年 リコーリース 入社 副社長執行役員
2016年 代表取締役 社長執行役員

現在に至る

企業プロフィール
リコーリース株式会社
リコー製品の販売支援会社として1976年に設立。
リース・割賦事業と金融サービス事業を軸に総合的なフィナンシャルサービスを展開。
資本金: 78億9,686万円
連結売上高: 3,139億円
連結従業員数: 972名(2019年3月期)

取材・文/村上 敬 写真/中山博敬

社会的な課題をとらえて“リースの先へ”行ける人材

─2017年度から2019年度までの中期経営計画で、“「リース」の先へ”という言葉を掲げられました。この言葉は、どのような意味でしょうか。

瀬川大介氏(以下、敬称略)

私がリコーリースの社長に就任した2016年当時は、リーマンショックや会計基準変更の影響などから、国内におけるリースの取扱高は伸び悩んでおり、我が社が成長を続けるためには、リースはもちろん、リース以外のことにも挑戦していく必要があります。その思いを込め、“「リース」の先へ”というビジョンを掲げました。リースや金融だけでなく、環境・社会・お客様の発展に役立つサービスや商品を提供できる企業を目指しています。

この3年で、新しい芽は出てきています。その1つが住宅賃貸事業への進出です。不動産の分野について、私たちはもともと投資用マンションローンや大家さん向けの家賃保証付きの口座振替サービスを行ってきました。これらのビジネスで培った不動産に関する知見やノウハウを活かし、新しい事業として住宅賃貸事業へ進出することにしたのです。自ら住宅の貸主になることで、視野を拡大し、新しいサービスを生み出そうという狙いもあります。 他の企業と連携しながら住宅賃貸事業を拡大し、少子高齢化などから生じる社会課題の解決に貢献することを目指しています。

─“「リース」の先”へ行くためには、どのような人材が必要ですか。

瀬川

自分たちは社会に対してどのような役割を果たせるのか、それを理解し共感したうえで、お客様の経営上の課題をとらえて新しいものをつくっていける人材ですね。ただ、私が就任した当初は、そのような人材がまだ活躍できていないと感じていました。

我が社はこれまで、事務用機器や医療機器等の製品を販売する会社に対し、リースというファイナンスサービスを通じて販売を支援するベンダーリースを得意として成長を続けてきました。リース契約を通じて販売会社の営業活動を支援することで私たちは効率的な営業活動ができており、このビジネスモデルで約40万社の顧客を築いてきました。こうした強みがある一方で、“リースの先”へ行くためには、さらなる強みを創る必要があり、そこには新たな価値観を創造する人材の力が必要であることは言うまでもありません。

先ほど申し上げた家賃保証付きの口座振替サービス等を担当している部門は、もともと「金融サービス本部」という名称でしたが、あるとき、より社会課題解決に向けた幅広いサービスの提供を目指すために「ソーシャルイノベーション本部」に改称したいと提案してきました。こうした前に向かう声を広く吸い上げるような改革を行うことを決意しました。

─社内改革に向けて、どのようなことから取り組まれたのでしょうか。

瀬川

まず四半期ごとに社員に向けて業績報告会を開催し、「私はこういうことをやりたい」「皆さんにはこういうふうになってもらいたい」とメッセージを発信するようにしました。

一方で、社員の本音を聞くために全国行脚しました。1回8人ほどと、約1時間、ざっくばらんに何でも話してもらう懇談会を実施しました。管理職から始め、次は一般社員です。管理職とそれ以外の社員たちを分けたのは、自由に発言してほしかったからです。とても時間がかかりましたが、そうやって話を聞いたところ、人員が足りない、システムが古いなど様々な課題が浮かび上がりました。それらを踏まえて「組織能力の強化」に取り組んでいます。

人材とシステムへの投資は惜しまない

─組織能力の強化のため、具体的に取り組んだこととは。

瀬川

社員と面談するなかで強く感じたのは、一人ひとりの業務負荷が大きいということです。リーマンショック以降、スリム化を優先したため、人材とシステムへの投資が止まっていました。結果、社員はやりたいことができなかったり、またシステム的な制限がかかったりする状況がありました。これを改善するために、人材とシステムへの投資や改革を積極的に進める方針を打ち出しました。

人材の部分でまず取り組んだのは、生産性を高めるために、働きがいや働きやすさを生み出す「残業ゼロ」と「有休取得率100%」です。有休取得率100%はなかなか難しいのですが、社長就任当初の78%から、2018年度は85% に向上しました。人事部は取得率を高めるために全社一斉の有休取得日をつくりたがりましたが、それは却下しました。

というのも、私は「随所に主となれ」※という臨済禅師の言葉が好きで、社員も自分で物事を考えて判断できる人になってほしいと思っています。有休をいつ取るかということもそうです。一斉の有休取得日を設けなくても一人ひとりが自分の判断で有休を取り、結果として取得率が上がっていくのが理想的ですよね。

残業ゼロは、2年目から少し変えました。社員から「残業なし、有休100%では時間内に業務が終わりません」と言われましてね。次の年からは「過重労働は絶対にダメ。残業は正しく管理を」という言い方に変えて取り組んでいます。

もう1つの大きな取り組みとして、サテライトオフィスへの移行にも力を入れています。通勤に片道2時間近くかかる社員もいて、それでは通勤だけで疲れてしまいますし、育児もしなければいけない社員はなおさら大変です。そこで2017年からサテライトオフィスの活用を始めました。オリンピック開催期間中は特に、都内は相当な混雑が予想されるため、積極的に活用するよう促しています。

システムについても、約20年前に作られた、一定のリース契約を大量に処理するためにつくられたものを、さらに多様な取り組みにも対応すべく、刷新を進めています。
※編集部注:全文は「随処に主となれば立つ処皆真なり」。主体性をもって物事にあたれば真実が見えてくるという意味。

「アビリティ・マップ」と機能する社内公募制度

─社員の皆さんが能力を発揮できる環境は整いつつあるように見えます。一方、能力開発はいかがでしょうか。

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