J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

特集│CASE1 日立製作所 生産性向上ためのピープルアナリティクス ホワイトカラーの 生産性向上モデルと 配置配属フィット感モデルを確立

日立のシステム&サービス人事総務本部は「ピープルアナリティクスラボ」を立ち上げ、サーベイとAI による分析で、従業員の生産性や配置配属などに対する意識をデータとして見える化することに成功した。
生産性向上や配置配属、リテンション等、広範囲にわたるその先進的な取り組みとは。

大和田 順子氏
日立製作所 システム&サービス人事総務本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ ピープルアナリティクスラボ エバンジェリスト 

株式会社日立製作所
1910年創業。OT(Operational Technology)、IT(Information Technology)およびプロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業に注力。
モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5分野でデジタルソリューションを提供することにより、顧客の社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値向上に貢献する。


資本金:4,587億9,000万円(2019年3月末現在)
連結売上収益:9兆4,806億1,900万円(2019年3月期)
連結従業員数:29万5,941名(2019年3月末日現在)

[取材・文]=菊池壯太 [写真]=編集部

人事課題としての「生産性」をどう見るか

世界有数の総合電機メーカーとして、グローバルで約30万人の従業員を抱える日立製作所。長年、「モノづくり」の分野で日本の産業界をリードしてきた同社だが、時代の移り変わりとともに、新しいしくみやこれまでになかった顧客体験、新たな価値を創造し、提供する「コトづくり」のビジネスにシフトしてきており、それにともない人事的課題も変化している。従来は深く思考し着実に遂行するタイプが多く活躍してきたが、これからの時代は、着実なタイプに加えて、より創造的な仕事ができる人財や、行動力の高い人財も必要になっている。

そして、もう1つの人事的課題は、働き方改革が進むなか、一人ひとりの生産性をどう向上させていくかということだ。日本企業の場合、特にホワイトカラーの生産性向上が課題だといわれる。製造現場であれば、生産設備の効率を上げる、あるいは時間あたりにできる工程数を多くするといった、わかりやすい指標があるが、ホワイトカラーに目を向けると、可視化すべき指標がなかなか得られない、もしくは可視化・数値化したとしても納得感のある指標を立てるのが困難、というのが現状だ。

だが、要は生産性向上のためには、少ない時間で生み出す価値を大きくしていけばよい。一人ひとりの従業員が、より時間を短く効率よく使い、より大きな価値を出すように意識していけば、生産性は上がっていく。そこで、一人ひとりの意識や行動を可視化していこうと考えたのが、同社のデータ人事の取り組みの出発点である。

システム&サービス人事総務本部ピープルアナリティクスラボのエバンジェリスト大和田順子氏は、次のように説明する。

「ES サーベイやエンゲージメントサーベイは世に多く存在しますが、『生産性』という視点からピープルアナリティクスを活用し、施策につなげようという発想のサービスは、ほとんど見当たりません。そこで、自分たちでつくってみようという話になったのです」(大和田氏、以下同)

サーベイの内容と実施方法

サーベイ開発にあたり、まずはプロトタイプとして、社外のホワイトカラー約2,000名(国内)を対象に予備的な調査を行った。最初に社内の従業員を対象にしてしまうと、日立の企業文化から特定の傾向が強く表れてしまう懸念があったからだ。ここでは、業種、性別、年齢をバランスよくサンプリングし、データの標準化を試みた。そのうえで社内の従業員にも調査対象を広げ、その成果として、生産性向上の意識と、配置配属のフィット感という2つのモデルを確立した(図1・2)。

なお、サーベイによって得られたデータやAIを使った分析結果は、社内の生産性向上に向けた施策立案に活用するとともに、顧客にも提供できるものとして定型化された。2018年10月に「日立人財データ分析ソリューション」としてリリースされ、これまでに社内外あわせて約2万人実施の実績を得ている。

2つのモデルから見えてきたこと

❶ 「生産性向上の意識」のモデル

2つのモデルについて、それぞれ詳しくみていこう。まず、生産性向上の意識についてのモデルである。ここでは、健康を意識している人、つまり「心身調整度」が高い人は、生産性も高いということがわかった。図1のように、ピラミッドの底辺の心身の調整がベースとなり、「効率性次元」「創造性次元」へとステージが上がっていくイメージだ。加えて、生産性を高めるためには、組織の側にも「意思決定過程浸透性」「自律尊重性」「成長支援性」「目標明確性」「働き方許容性」(様々な働き方が許容されている)といった因子のあることがわかった。

「近年、健康経営に注目が集まっていますが、心身調整度が高い、つまり健康を保とうとしていることと生産性は直結していることが、データで裏づけられたといえます。まず心身調整度が個人の生産性を上げる基礎となり、これが高い人は効率性次元の得点も高くなる。そして効率性次元の得点が高くなると、創造性次元の得点も高くなるというように、段階的なモデルが形成できたのです」と大和田氏は話す。

生産性を上げるために「イノベーティブな発想」や「デザインシンキング」を高めようという話がよくあがる。しかし、このモデルは、心身の調整ができていなかったり、仕事が効率的にできていないのに、いきなり創造性だけを高めるのは難しいことを示唆している。

もう1つ、残業に関する興味深いデータがある。

「これまでは、多くの日本企業で残業が多い人ほど人事評価が高いという傾向があったと思います。量も含めて仕事を任されている分、評価も高くなるというわけです。ところが、多くの組織で、残業の多い人は心身調整度が低いことがわかりました。無理して残業すれば、短期的には成果が上がるかもしれませんが、長くは続かない構造といえます」

真に生産性の高い働き方は必ずしも労働時間の長さに相関しないということを裏づけるかのように、最近は、残業時間が多いか少ないかだけでは人事評価に差がつかない組織が増えているという。大和田氏によると、この傾向はここ1年くらいで顕著に見られるようになっているということだ。

❷「配置配属のフィット感」のモデル

もう1つ、サーベイの結果として検証されたのが、配置配属のフィット感と生産性との関係性だ。

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