J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年07月刊

成長の仕掛け人 第1回 懐を開き、現場を知る 人を育てる オープンな組織づくり

「金融業は人で全てが決まる」と語るのは三井住友銀行 常務執行役員の金丸宗男氏。組織を変え成長の原動力となるのは、オープンであることだという。銀行そのもののビジネスモデルが変わろうとしている今、人材育成をどのように捉えているのか。

Profile
金丸宗男 (かなまる むねお)氏
三井住友銀行 常務執行役員

1987年住友銀行(現・三井住友銀行)入行。1989年事業調査部に配属。融資先の信用調査や各業界の経済動向リサーチを長らく勤める。2度の融資先出向の後、2002年に法人戦略営業部へ異動し、新規取引先の開拓などを経験。06年人事部企画グループ、12年法人営業部長を経て、15年より人事部長。2018年4月より現職。
(*取材は2018年3月、人事部長当時)

Company Profile
株式会社三井住友銀行
千代田区に本店を置く3大メガバンクの一角。「Customer First」「Proactive and Innovative」「Speed」「Quality」「Team SMFG」という5つのバリューに沿った経営を行う。
資本金:1兆7,709億円
従業員数: 2 万9,658 名(2017年9月30日時点)


[取材・文]=田邉泰子 [写真]=中山博敬

現場に入り、ひたすら聞く

「現場が何を考えていて、何に課題意識を抱えているのか。働きがいや励みにつながるものは何か。そういったことを受け止める感覚を大切にしなければならないと考えています。ですから、本部にこもるのではなく、できるだけ現場に出るようにしています」

そう話すのは、三井住友銀行常務執行役員の金丸宗男氏だ。

支店勤務を経て、企業調査部門に在籍。融資を行う企業の信用調査や業界動向のリサーチに長く携わった。その後、営業として法人取引先の新規開拓を担う渉外係や法人担当を経験。法人営業の部長を務め、2015年に人事部長に就任した。

現場を深く知ることの大切さは、現場経験から学んできたものだ。例として挙げられるもののひとつが、事業調査部時代の出向である。融資先のある企業が経営危機に陥った際に出向した金丸氏は、外様であるが故に厳しい洗礼を受けたという。

「最初は『銀行のスパイですか?』などと言われました。会社の再建どころか、どこかで債権回収を目論んでいるのではないかと疑われていたようです(笑)。ショックでしたね」

どうしたら組織に溶け込めるのか。金丸氏が出した答えは、まずは信頼してもらうということだった。

「信頼なしに前進などありえないと思ったんです。ですから、信頼してもらうため、とにかく話を聞くことに徹しました。財務指標など表面的なことではなく、もっと会社の内面に迫らなければ再建の鍵は見つかりませんから。『ウチ(の会社)って、どうして業績が悪化したんでしょうね』と、聞いて回りました」

全国の事業所を巡る日々が1年近く続いたが、どこへ行っても丁寧に話を聞き、就業後の飲み会にもよく参加したという。

「飲み会があると知れば足を運び、輪の中に入れてもらいました。仲良くなってもらうのに精一杯でしたね。語り合えば、会社を良くしたいという気概にあふれる人たちに出会えるんですよ。地域や年代を問わず、そうした人材は各地にいました」

味方を見つけた金丸氏は、次のステップに打って出た。各所で見つけた再建を託せる人材を本社に集め、経営企画室を発足させたのである。

「現場の人材を引き抜くわけですから、厳しい声も上がりました。しかし躊躇している余裕はありません。出向先の社長や上司の強い後押しもあり、実現につなげました」

事業部横断でチームをつくることは、同社にとって画期的なことだった。この経験で金丸氏は、「現場を知ること」の大切さを体感したのである。

事業部に“伝わる”情報開示を

人事部長を務めていた際も、できるだけ現場に顔を出し、現場の実態を知ることを重視した。同時に心掛けていたのが、相互に連携し合うオープンな組織づくりである。

「人事まわりの課題は、かつてより複雑化していますから、チーム間の連携は従来に増して重要です。前任部長の尽力のお陰で、部内全体に一体感がありますから、この形を加速させ、組織全体に広めていくことが私の役割です」

相互に連携し合うのは、人事部の中だけではない。金丸氏が取り組んでいたのは、事業部と共に歩む人事だ。特に人材の配置については事業部と協議を重ね、双方の納得感を高めていく。

「かつては人事部サイドが異動の狙いを説明せずにいたせいで、時に誤解を生んだり事業部の反感を買ったりすることもありました。しかし今は、人事考課も含め、できるだけ情報をオープンにして両者で話し合います」

情報開示をし始めて、改めて評価や人材戦略について、人事と事業部とではギャップがあることを知った。そこで、各事業部への人材配分の狙いや異動の目的、期待するストレッチ要素を説明することもある。

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