J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年07月刊

Column 主体的・探究的な学びを促す 「eポートフォリオ」

「探究的な学習」を進めるうえで、効果的なツールとして注目されているのが、ICT 機器を用いて学びの記録を蓄積し、それらを学習やその評価に活用する「e ポートフォリオ」だ。
e ポートフォリオが、どうして主体的・探究的な学びにつながるのか。
e ポートフォリオの活用に詳しい東京学芸大学の森本康彦教授に聞いた。

森本康彦(もりもと やすひこ)氏 
東京学芸大学
情報処理センター 教授

長岡技術科学大学大学院修了。博士(工学)。1991年、学習院大学理学部数学科卒業後、三菱電機情報技術総合研究所、広島市立牛田中学校教諭(数学)、千葉学芸高等学校教諭(情報)等を経て、2009年東京学芸大学情報処理センター准教授、2017年同大学教授、現在に至る。
著書に『教育分野におけるeポートフォリオ』(ミネルヴァ書房、共著)など。

[取材・文]=崎原 誠 

「野球ノート」による学び

最近の高校球児は、練習後にノートをつける。「今日は、これを試したけれど、できなかった。次回はこれをやろう」「チームメイトとこんなやり取りをして、こう感じた」……。試合のスコアや打率などの結果だけでなく、練習の中で起きた出来事や成長、達成、思いを含む、多様な振り返りの記録である。

なぜそんな練習のプロセスを残すのかというと、そうやって練習(学び)を振り返ることで、「以前はこれができなかったけれど、できるようになった」と成長の実感が得られると共に、「次はこうしてみよう」という教訓だけでなく意欲までも生まれ、結果、主体的に取り組むようになるためだ。大人たちが仕事で嫌々つくる、上司に提出するための「日報」ではない。自分のための学びの記録である。

このように蓄積された学びの記録を「ポートフォリオ」と呼ぶ。そして、それを電子化したものが、「eポートフォリオ」である。

紙には紙の良さがあるが、デジタルデータであれば、写真や動画など様々なデータを蓄積し、教材として活用できる。「以前、同じようなことがあったな」と、検索することも容易だ。また、オンラインであれば、時空を越え、いつでもどこでもアクセスすることができ、仲間とも共有できるため、継続的に学び続けるツールになり得るのだ。

主体性と気づきが生まれる

さらに、見逃せないのが、ポートフォリオに記録する行為が「学びそのもの」であるという点だ。eポートフォリオを蓄積したり活用したりする際は、何を残すか、どれを見るかを、本人が選択することになる。そこで、主体性が発揮されると同時に、どうしてそれを選んだのか考えることで、新たな気づきが生まれる。さらに、ポートフォリオがたまっていけば、自己肯定感が得られ、探究へのモチベーションも高まる。ポートフォリオを作らずに探究的な学習を進めても、ただの“ 作業”になりかねない。

ポートフォリオをためていくのは大変だと思うかもしれないが、そのようなことはない。私はポートフォリオを「学びのアルバム」と呼んでいるが、旅行に行くと写真が増えていくように、学んでいく中で自然と積み上がっていく。

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