J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年09月号

OPINION3 採用と組織風土の深い関係 “尖った人材”を採用しても 組織は変わらない

昨今では、自社にない視点を取り入れる1つの戦略として、
「異色の人材を採用したい」と、経験者採用が行われている面もある。
しかし、「異色の人材をただ組織に放り込んで、うまくいくはずがない」——と、
約20 年にわたり採用・人事コンサルティングを手掛けてきた樋口弘和氏は語る。
日本における中途採用の難しさと、変わりたい企業が取るべき対応とは。


樋口弘和(ひぐち ひろかず)氏
トライアンフ 代表取締役

1982 年に早稲田大学商学部を卒業後、日本ヒューレット・パッカードに入社。以後20 年近くにわたり、採用、教育、給与システムなどの人事部門に勤務し、コンピュータ事業部の人事部門を統括。米国本社でキャリア採用やダイバーシティ、ワークライフバランスといった最先端の人事を学ぶ機会に恵まれる。1998 年に人事・採用のアウトソーシングとコンサルティングを手掛ける株式会社トライアンフを設立。


[取材・文]=崎原 誠 [写真]=トライアンフ提供

そもそも中途採用は難しい

7年前、『即戦力は3年もたない』という自著の中で、自社の人材ポートフォリオに合わせて最適な人材を採り、活用することを薦めた。しかし、最近は過去最高の求人倍率にあり、多くの企業が、人材を選べる状況にない。本音では「できれば新卒を」と思いつつも、「今、人が足りなくて困っているのに、2年後に素人が来られても困る。育てるノウハウもない」と、やむを得ず中途採用をしているところも多いのではないだろうか。

「できれば新卒を」の理由を、本誌読者はお分かりだろう。中途採用者の中には、前の会社で身につけた仕事の仕方や常識、考え方などが邪魔をし、転職先の社風になじめない人も少なからずいる。中途採用者の離職理由のほとんどがこれである。

他方、新卒者は色やクセがついていないので変に悩むことがなく、その会社に染まりやすい。そうした違いも踏まえて、採用を考える必要がある。

“経験”の価値が大暴落

そして、最近の中途採用は、「即戦力」というイメージからすると意外に思われるかもしれないが“ 経験重視”から“能力重視”にシフトしてきている。

ひと昔前の中途採用は、「〇〇の担当が必要だから〇〇の経験者を採用する」という形が一般的だった。ところが今では、“経験”の価値が大幅に低下している。もちろん、経験が活きる仕事もある。例えば、給与計算のような業務は、法律に基づくオペレーションなので、専門知識や業務経験が役立つ。しかし、そうした仕事の多くはアウトソース(業務委託)が可能だ。採用コストを考えたら、IT化や外注化したほうが効率的だろう。一方、同じ人事の仕事でも、採用業務などは、経験がなくても数カ月でキャッチアップでき、経験よりも、その人の感性や能力に価値がある。

経験の価値が低下しただけではない。採用する側からすると、経験を持っていることはリスクでもある。例えば、「給与計算を10年続けてきたが、転職を3回している」という人がいたら、私は疑ってかかる。これはあくまで持論だが、同じ職種なのに会社を転々とする人には、不満や問題を抱えている場合が多く、それで頻繁に働く場所を変えているなら、物事を“自責”、自分の責任と考えない人なのではないかと思うのである。そういう人は、別の場所に移っても同じことを繰り返す可能性が高い。そうした人が、日本の中途採用市場には一定数存在するのが現実なのである。

優秀な経験者がいない理由

なお、日本では、外資に比べて、優秀な経験者を採用しづらいという事情もある。というのも、欧米と日本では、採用方法が大きく異なり、欧米は、仕事に対して人を採る「ポジション別採用」が主流だ。ポジションが空いたら、社内・社外の双方に募集をかけ、応募者の中から最適な人を採る。当然、社外より社内、経験がないより経験のあるほうが有利だが、外から人が来るのは当たり前で、応募も多数ある。

対して日本企業は、職務を曖昧にしながら、人を育てて組織をつくろうとする。だから新卒採用が中心となり、優秀な人を囲い込もうとする。優秀であればあるほど社内でのキャリアアップに目を向けさせる仕組みができているため、そういう人は採用市場に出にくく、中途採用の募集をしても良い人材が集まりにくいという違いがある。

■中途採用にも手間をかける

しかし裏を返せば、どうすれば日本企業で中途採用がうまくいくか、方向性が見えてくる(図1)。「今、このポジションを担ってもらえれば、3年で辞められてもいい」という場合を除けば、経験よりも能力重視で採用する。そして、自社の社風に合うかどうか、カルチャーフィットをしっかり見極めることだ。

転職サイトや人材紹介会社に登録し、ただ人材を紹介してもらうのを待っていたのでは、経験はあっても、能力はそれほどでもなく、社風にも合わない人ばかりが来てしまう可能性が高い。そこで昨今は、“応募してきていない人”にアプローチする企業が増えている。転職サイトや人材紹介会社の登録者データベースを直接見られるサービスを利用したり、仲介を通さずに候補者に直接アプローチする「ダイレクト・リクルーティング」が行われたりするようになった。

ちなみに、採用方法で一番うまくいっているのは「ヘッドハンティング」だ。かつては役員クラスが中心だったが、コアなスタッフレベルにまで対象が広がっている。潜在転職者層は労働人口の10%程度といわれるが、ヘッドハンターは、残り90%にもアプローチする。彼らは、何度もミーティングをして依頼を受けた会社のカルチャーや仕事の役割を深く理解し、そのうえで、同じ業種・職種から探すのではなく、独自のターゲッティングを行ってから、さまざまな手や情報を駆使して候補者を探し出す。採用に至るまで通常8~ 12カ月ほどかかり、採用する人の年収と同等の費用が必要となるが、顧客の満足度は高い。

活躍する中途の特徴3つ

どんな採用方法をとるにしても、中途採用を行うなら、入社後に活躍する人を見分けたいものだ。その特徴は以下の3点だと、これまでのコンサルティングや自社での採用経験から言える。
向上心
しなやかさ

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