人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第57回 「ワレサ 連帯の男」川西玲子氏 時事・映画評論家
「ワレサ 連帯の男」
2013年 ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ
『ワレサ 連帯の男』は、ポーランドが生んだ巨匠アンジェイ・ワイダ監督の作品である。ある世代以上の映画好きに、アンジェイ・ワイダほど強い印象を残した監督はいないのではないか。私もその1人で、2016年10月に死去した時には、まさにひとつの時代の終わりを実感したものだ。
ワイダは1955年に、ドイツ占領下の抵抗運動を描いた『世代』でデビューし、その後の『地下水道』『灰とダイヤモンド』のレジスタンス3部作で、世界的な名声を博した。以後、社会主義政権下のポーランドを描きながら、同時代を生きる世界中の映画ファンに、国境も体制も越えたメッセージを送り続けたのである。
○労働運動から東欧変革へ
映画は1980年、独立自主労組「連帯」の初代委員長として時の人になっていたレフ・ワレサが、イタリア人ジャーナリストのインタビューに応えるという形で始まる。ことの発端は1970年12月に起きた食糧暴動だった。物価高騰で生活が苦しくなる一方の労働者たちが、賃金上昇を求めて抗議行動を起こしたのである。