CASE 2 三井住友海上火災保険 “きれいなキャリアシート”は書かせない 43歳、仕事人生のハーフタイムに 自分と向き合う意味
三井住友海上火災保険は、33歳、43歳、50 歳時の社員を対象に、自らのキャリアを考えさせる研修を実施している。
中でも重視しているのが、43歳時に行う2日間のプログラムである。
「社内異業種交流」ともいえるほど多種多様な“同級生”が集い、互いの強み・弱みや今後のキャリアについて深く語り合うことで、仕事をするうえでの気づきや、成長に向けたモチベーションの向上につなげている。
●導入の背景 ボリュームゾーンを活性化
三井住友海上火災保険は、今から7年前の2010 年、43歳の総合職を対象としてキャリア研修を導入。自らのキャリアを振り返り、今後の在り方を考えるプログラムである。
その後、多様な社員の役割拡大をめざす全社改革「役割イノベーション」の一環として、人事体系を改定。総合職・一般職という職種区分を廃止し、「全域社員」「地域社員」という、転居転勤の有無以外の差をなくした体系に改めたことを受け、2013 年度から地域社員も対象に加えている。
また、2013 年度から33 歳時、2014年度からは50歳時にもキャリア研修を開始。現在は、入社2年目研修で初期キャリアを考えることから始まり、ほぼ10 年の節目ごとに、自らのキャリアを振り返り、将来について考える機会を設けている。そもそも、同社は、どうして43歳で自らのキャリアを考えさせることにしたのだろうか。
「この層は、当社にとって一番のボリュームゾーンに当たります。ボリュームゾーンの社員に働きがいを感じて活躍してもらわないと、会社は成長しません。50代以降も能力を発揮して活躍してもらうために、モチベーションを高める施策が必要と判断しました」(人事部能力開発チーム課長・髙﨑氏)
2013 年度をピークに研修対象の全域社員は減少に転じたが、今でも合計で約400人が在籍している。
同社で初めてライン長ポストに就くのは、30 代後半~ 40 代初めが標準的だ。43歳は、そういった時機にも重なり、参加者の全域社員のうち、3分の1がライン管理職である。もちろん、それ以降に昇進することもあるが、当然、ポストには限りがある。昇進することだけに価値を求めず、各々の立場で活躍してもらう必要がある。
43歳という年齢には、もう1つ意味がある。22歳で就職して定年後再雇用を含め65歳まで働くと考えると、ちょうど中間地点に当たるのだ。
「“折り返し地点”という捉え方もありますが、引き返すのではなく、新たなところをめざしてもらう必要があります。前半戦を振り返って後半戦に備える、サッカーの“ハーフタイム”のような捉え方です」(髙﨑氏)
●43歳時研修の内容 自らのキャリアを考えさせる
43歳時研修の1回の受講者は100人程度。自身の今後に目を向けさせるプログラムとなっている(図1)。
「この年代は、人を指導する立場になっている人が大勢います。マネジャーであれば自分の組織を見ていますし、そうでなくても誰かを指導していることが多い。普段は自分以外の人のことばかり考えていますので、開講メッセージでは、『この2日間は自分のことだけを考えてください』と話します」(人事部部長〈能力開発担当〉兼能力開発チーム長・大西氏)