OPINION2 まだまだ伸びしろ、優位あり 40代の能力・人格変化と 人生の危機の乗り越え方
精神科医・心理学者のユングは、30 代後半から40 歳ころを「人生の正午」、40 代~高齢期までの中高年期を「人生の午後」と位置づけている。
人生の正午から午後にかかる40 代とは、具体的に、能力や機能、感情といった面でどんな変化がある時期なのだろうか。
発達心理学と老年心理学を専門とする髙山緑氏に聞いた。
40代以降も伸びる能力はある
時折、企業の人事担当者で、40 代以降は能力的に後がない、または低下する一方と考えておられる方とお会いする。しかし、実際にはそんなことはない。まずは人の発達の観点から、40 代(中年期)について見ていきたい。
30 年ほど前より「生涯発達」の研究が進むにつれて、人の発達は一方向的ではなく、多次元的で多方向的であることが分かってきた。つまり、能力や機能によって、生まれてすぐに向上していくものもあれば、青年期や中年期、あるいは高齢期になってから発達するものもある。また青年期以降、年齢と共に緩やかに低下するものもあれば、長期にわたり維持されるものもある。
確かに、基本的な認知機能―物事を知覚する能力や、短時間に心の中で情報を保持しながら同時に処理もするワーキングメモリー、また推論能力などは、残念ながら40 代程度の中年期以降、緩やかに低下する傾向があることが分かっている。
一方、そうした基本的な認知機能を総合的に使い、課題を解決するような能力―心理学でいうところの「知能」は、より長期にわたって発達・上昇し、高齢期にもあまり低下しないことが研究によって明らかになっているのである。
知能と知恵は経験で豊かに
■知能には2種類
この「知能」は、大きく2つ、「流動性知能」と「結晶性知能」に分けられる。
流動性知能は、新しいことを学習したり、新しい環境に適応したりする際に必要となる問題解決能力である。他方の結晶性知能は、そうした学習や経験で得た知識や考えを応用する能力を指し、総合的な能力といえる。
流動性知能は20~30 代で低下するイメージがあるかもしれないが、実際には青年期から30 代まで上昇し、その後も高い水準で維持され、60 歳を過ぎたあたりから緩やかに低下することが分かっている。そして、結晶性知能はさらに長く維持される。研究によってやや相違があるが、青年期以降も緩やかに上昇し、ある研究では70代まで上昇を示すデータもある。
ちなみに、基本的な認知機能や知能は、筋力と同様、使うほど鍛えられ、使わなくなると低下する。特に基本的な認知機能には、訓練や有酸素運動などが好影響を及ぼすことが分かっている。
■知恵