第41回 多国籍メンバーが働くIT企業の学び 毛塚智彦氏 サイトエンジン 代表取締役 他|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
サイトエンジンは、訪日情報サイトを運営する小さなベンチャー企業です。
日本の会社ですが、外国人スタッフを採用し、日本の観光情報の記事を各国の言語で配信。
さまざまな国から来たスタッフが共に働く職場を取材しました。
取材・文/井上 佐保子 写真/宇佐見 利明
この数年、日本を訪れる外国人旅行客は急増しています。2016年には訪日外国人観光客数が2000万人を突破。外国人向けに情報提供して顧客を取り込む「インバウンド対策」はますます盛んになっています。
中でも最近はタイの観光客が急激に増えています。そんなタイで最も閲覧されている多言語の訪日情報サイト「JAPAN LIST」を運営しているのが、サイトエンジンというベンチャー企業です。外国人社員が集まる同社では、言葉も文化も違う社員たちの能力をどのように引き出しているのでしょうか。東京都千代田区にある小さなオフィスを訪ねました。
強みは多国籍なメンバー
「当社には多様な国籍のメンバーがおり、グローバルビジネスのサポート事業を展開しています。英語、中国語、韓国語はもちろん、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ビルマ語など、対応言語はさまざまです」
そう話すのは社長の毛塚智彦さん。タイに拠点を持つ共同経営者とウエブマーケティング事業を始めたところ、東南アジア圏に商品やサービスを売り込みたい日本企業からオファーが次々に舞い込むようになりました。現在は、多言語への翻訳やパンフレット・ホームページの制作、ウエブマーケティング全般と、外国語による幅広い事業を展開しています。
「東南アジアには英語が通じにくい国が少なくありません。現地の幅広い層にリーチするためには、その国の言語での情報提供、サービス展開をすることが不可欠なのです」
中でもタイは、英語が得意でない人が多く、言語の問題がネックとなって日本の観光情報をうまく発信できない、という課題がありました。
そこで2015 年2月、自社メディアとしてJAPAN LISTを開設。ニッチなターゲットを狙うサイトながら、早くも月間100万ページビューを超え、日本とタイをつなぐ架け橋的媒体として存在感を強めています。
“任せる”編集方針
JAPAN LISTのユニークな点は、各言語のネイティブスタッフに全ての業務を任せているところ。具体的には、日本在住の各言語のネイティブライターが取材・執筆したオリジナル記事を、日本、バンコクオフィスのネイティブのスタッフがチェックして配信しています。日本人スタッフは基本的に直接関わりません。その理由は、「日本語で書かれた文章をただ翻訳しただけでは、表現が硬くて現地の人に伝わらないから」。