おわりに 新入社員の習慣づくりのコツは、 意欲と自信を喚起する仕組み
なぜ、新入社員に習慣化が必要か
成果を上げているビジネスパーソンと、そこそこのビジネスパーソンの違いは何か。それをひもといていくと、小さな“習慣”の積み重ねの違いが見えてくる。例えば上司への報告の仕方ひとつをとっても、どのタイミングでどのように報告するかというのは、その人の習慣に拠るもの。報告の手順にしても、結論から話すのか時系列で話すのか、思ったことから話すのか、というのも習慣だ。
したがって入社してくる新入社員には、まずよい習慣を身につけさせることが彼らの成長の近道になる。辞書では、習慣を「学習によって後天的に獲得され、反復によって固定化した個人の行動様式(大辞林)」と定義している。これは、習慣は個人の能力に関わらず、誰でも身につけられるということを示している。
では、どうすれば新入社員はよい習慣を身につけることができるのか。識者に話を聞いた結果、以下のポイントが浮かび上がってきた。
POINT1 “何のために”を理解する
目的が分からないまま、“やれと言われたからやる”では、続けることは難しい。何のためにするか、そしてそれが自分にとってどれほど必要なことなのかを理解するからこそ、やってみようと思えるのだ。
園田学園女子大学教授の荒木香織氏(コラム)も納得感が薄いと習慣化は難しいと指摘している。同氏はラグビー日本代表のメンタルコーチを務めていた際、彼らの行動を習慣化するために、それぞれの行動に対して目的や理由を考え、理解してもらうようにしていたという。なぜやるのか、その必要性が分かって初めて、習慣化の第一歩を踏み出すことができるのだ。
POINT2 習慣を具体化する
習慣を「いつ、どのように行うのか」という具体的な行動とタイミングに落とし込むことも必要だ。習慣化コンサルタントの古川武士氏(OPINION1)は、行動とタイミングが明確になるほど、人は「やってみよう」というスイッチが入ると話す。
例えば営業部門に配属された新入社員に、準備をしてから顧客訪問に臨む習慣をつけたい場合、ただ「準備をしなさい」と伝えるだけでは、新人は何をしていいのか分からない。「過去の取引を調べる」「先方の事業の現状を確認する」「自分なりにどういう商品が勧められるか仮説を立て、顧客訪問の前にその内容を上司にメールする」など、具体的なところに落とし込む必要があるのだ。