CASE 2 グローリー 押しつけでは、成長につながらない 自ら学び、考える習慣をつける “気づき”の仕掛け
通貨処理機のリーディングカンパニー、グローリーが近年力を入れているのが、30歳までの若手社員に対するキャリア教育だ。
ポイントは、押しつけではなく、自ら「よし、やろう!」「やらなきゃ!」と思わせる仕掛けづくり。
継続的に気づきの場を提供することで、主体的に成長していく意識と習慣を身につけさせている。
●若手教育の全体像 気づきの場の提供を重視
■「学ばなきゃ!」への転換
「人が育つポイントは、“いかに気づけるか”です。押しつけられて学んでも、成長するとは思えません。例えば『習慣化しなさい』と言われても、自分の意思で『やらなきゃ』と思わないと、なかなか続かないものです」
そう語るのは、総務本部人事部人材開発グループアシスタントマネージャーの山本正昭氏だ。同社の若手教育では、いかに学びの必要性を感じて、自主的に学び成長しようと思えるかということを重要視している。
「ですから、人事が行うべき一番の教育は、気づきの場の提供です。『学べ』ではなく、『学ばなきゃ』と思わせること。本人が『やらなきゃ』と思えば、自然と習慣になっていきます」(山本氏、以下同)
■自己啓発による“学ぶ文化”
社員教育の特徴は、自己啓発を重視していることだ。階層別、選抜型など充実した研修プログラムも設けているが、それだけでなく、各人の主体的な学習を後押しすることで、継続的に学ぶ文化を築いてきた(図1)。
「当社の自己啓発支援の歴史は古く、昭和50 年代に通信教育が世の中に広まり始めた頃から行っています。今の管理職も、若い頃に通信教育で学びました。自ら学ぶこと、部下に学ばせることが文化として根づいており、3年前には、対象者数3500人に対し、通信教育の年間申し込み数が延べ1000人を超えました」
受講を促す工夫として、例えば通信教育の受講案内の冊子には、2年に一度、特集ページを設けている。「対話」「グローバル」など、その時々の自社の課題を取り上げ、関連の講座を案内することで、受講者を増やしている。
通信教育は6、10、2月に申し込みを受け付けるが、2月に受け付けるのも受講を促す工夫の1つ。福利厚生のカフェテリアプランのポイントを受講費に充てることができるので、ポイントの失効が近づいた時期に受け付けることで、受講のきっかけにしている。
また、人事部主催の集合研修では、毎回、呼びかけを行っている。
「研修では誰でも気づくことがあるので、『鉄は熱いうちに打て』と、そのタイミングで通信教育の案内をします。2年前からは、費用や時間の面で二の足を踏む人でも勉強ができるように、eラーニングの提供も行っています。昨年度は人事部主催の研修受講者全員、延べ300人以上にアカウントを付与し、呼びかけました。スマートフォンで学べる手軽さもあり、好評です」