OPINION2 キーワードは「振り返り」 経験から学ぶ習慣をつける 新入社員研修のつくり方
「新入社員に身につけさせたいのは“ 現場で戦える力”。
配属後、人事が支援できる余地は小さくなる。新入社員研修中に学んでほしい」そう語るのは、長年、採用や人材育成に携わってきた、ぐるなびの執行役員、田中潤氏だ。
中でも重視する “ 経験から学ぶ習慣”をつけてもらうための新入社員研修での工夫を聞いた。
知識偏重でいいのか
新入社員に身につけてほしい知識やスキルは山ほどある。それだけに新入社員研修は、年々、コンテンツとメッセージが増えていき、短い期間に盛りだくさんのカリキュラムを詰め込むことになりがちだ。
ビジネスマナー、スキル面の教育やビジネス、業界の基礎知識の付与も、もちろん必要。仕事の進め方、対人折衝、キャリア意識、チームビルディング、働く意識づけなどなど、教えたいこと、伝えたいメッセージを挙げればきりがない。それらを実践できるようにするには、新入社員研修で、「型」をたたき込む必要も生じる。
だが、問題は配属後にどう働くかだ。研修は研修でしかない。ただセオリーや原理原則を知っているだけでは役に立たないのである。大切なのは、それを行動に移すこと。さらに、その行動がいつでも再現できるように習慣化して、“ 普通にできること”にしなければならない(図1・2)。このレベルまで到達しないと、現場配属した後、役に立つ力が身についていなかった、ということにもなりかねない。
最も身につけるべきなのは「経験から学ぶ」習慣である。多様な経験を学びと成長に結びつけられる―配属後に自走できるようにするには、この力が何よりも重要だ。
経験学習サイクル(図3)を回す習慣、つまり習慣が自然に身についた新入社員は強い。教わったことを状況や相手に応じて活かし、前向きに成長しようとしている新人に対しては、誰でも応援しようという気持ちになるだろう。周囲から教えてもらえる新人、可愛がってもらえる新人になることは、成長への近道といえる。
目標を設定し、姿勢を変える
では、経験から学べる新人を育てるために、新入社員研修はどうあるべきか。当社では、さまざまな研修コンテンツに横串を通すメッセージとして、以下のような目標を立てている。
1つめの目標は「殻を破る」だ。配属後は、上司、先輩からのフィードバックを素直に受け入れ、分からないことは謙虚に質問しなければ、学ぶことができない。受容と発信の双方が大切だ。そこで、自分をよく見せようとか、そつなくやり遂げようといった思いを捨て、傷つくことを恐れない心構えで臨んでもらう。無意識にかぶっていた鎧を捨て、殻を破ることが大切である。