OPINION1 フィードバックのゴールデンタイムは、1週間以内 新入社員の“習慣化”に必要なのは 行動の具体化と十分なフォロー
「新人に、早く良い習慣を身につけさせたい」―。
多くの人事・教育担当者や現場管理職が、そう考えて教育を行っているはずだ。
だが、いったいどれだけの新人が教えられたことを実践し、習慣として身につけることができているのか。そこにたどり着くには、企業側にも“ 教える”にとどまらない工夫が必要だろう。
新入社員の習慣化に必要なことは何か。「習慣化コンサルタント」として、社員教育の定着化支援や働き方改革コンサルティングを行う古川武士氏に、そのポイントを聞いた。
ビジネスは習慣でできている
ビジネス能力のほとんどは、“習慣”によって成り立っている。
例えば、PDCAを回す習慣がある人は、計画を立ててから仕事に着手し、結果を振り返って、次の行動に活かす。その習慣がない人が同じことをしようとしても、簡単にはできない。
コミュニケーションも習慣だ。結論から話すのか、背景から話すのかといった話し方の特徴は、その人の習慣によるところが大きい。報連相(報告・連絡・相談)の仕方もそう。メールチェックのタイミングやメールの書き方にも、その人の習慣が表れている。午前中に何をするかも習慣。会議の議事録をその日のうちにまとめるのも習慣。申請書の書き方も、書類のフォルダの保存の仕方も、アポイントの取り方も習慣だ。我々の仕事の8割以上は、習慣から生まれた結果と言ってよい。
働き方の習慣は多種多様で、個々人が、良い習慣も悪い習慣も数多く身につけている。しかし、特にホワイトカラーの場合、上司も細かいところまで介入してこないので、周りがどうやっているかも知らないし、そもそも、その行動が自分の習慣だという認識すらない。
習慣というのは、自然と繰り返している限り、苦労せずに続けることができる。なぜなら、我々の脳には、一度習慣化したことを自動的に繰り返そうとする機能があるからだ。例えば、寝る時間、起きる時間にしても、意識しなくても毎日の生活のリズムによって大体、決まった時間に寝て、決まった時間に起きるものだ。
だが、いったんこうした“自動運転”の状態になると、変えようと思っても容易には変えられない。脳にとっては良い習慣も悪い習慣もなく、新しい変化に抵抗し、いつも通りの状態を維持しようとする。私はこれを「習慣引力」と呼んでいる。
習慣化は新入社員のうちに
したがって、良い習慣を身につけさせたいなら、まっさらな新入社員のうちに行うのが一番だ。自分なりのやり方ができあがってしまうと、古いものを置き換える際に「習慣引力」が働く。新入社員は、いわば“初期インストール状態”にあるので、新しい習慣を吸収しやすい。
ところが、多くの企業の新入社員教育は、“習慣化”に対する意識が薄い。必要な知識やスキルは教えるが、それを習慣として定着させる仕組みがないのだ。物事の理解度をレベル1:分かる、レベル2:できる、レベル3:実践する、レベル4:習慣化する、レベル5:教える―に分けた場合、集合研修の場でできるのは、レベル2まで。職場での実践を促し、習慣化させるには、それなりの仕掛けが必要だ。
また、現場のOJTで上司が新人を指導する時も、望ましい行動を習慣として身につけさせることができているかというと、残念ながらそこまで至っていないケースが多い。できていない結果を叱るだけでは、習慣化は進まない。