人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第52回 「シン・ゴジラ」川西玲子氏 時事・映画評論家
「シン・ゴジラ」
2016年 日本 脚本・総監督:庵野秀明
2016年は日本映画の当たり年だった。『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』という、3本のヒット作を生み出したのである。いずれも世界に自信を持って出せる佳作だ。社会経済自体はそう好調ではなかったにも関わらず。いや、だからこそ、この3作は日本人の心に「刺さった」のである。
この3作がヒットしたのは、日本人に本物の感動と希望を与えたからだろう。特に『シン・ゴジラ』は安易な自画自賛に陥らず、ユーモアを織り交ぜながら、日本の現状と問題点を明確に描き出している。純粋な娯楽作品でありながら、非常に社会性が強く、政治的な映画にもなっている。
何しろ、会議や議論が重要な役割を占める異色作なのだ。指導者がちょっと頼りないというような、日本社会の特徴も戯画的に描き出している。庵野秀明監督は、外国人には分かりにくいものになることを承知のうえで、そういう現実を踏まえた「日本人が本当に面白いと思う映画をつくる」という姿勢を貫いた。