寺田佳子のまなまな 第11回 保育園経営者 宮村柚衣氏に聞く 「ココロで行うマネジメント」
今回のお相手は、「ちゃのま保育園」経営者の宮村柚衣さん。
自分の子どもが待機児童になったことから歩み出した起業家の道は、楽しいことばかりではなかったといいます。
現場の保育士さんたちを活かす「宮村流」マネジメントについて、子どもたちの笑い声が絶えない保育園で、お話を聞きました。
「自分でつくったらええやん」
今回のまなまなは、「お砂場」から始まる。
前にここで遊んだのは、遠い遠~い昔なのだが、三つ子の魂なんとやら。気前のいい2歳のお兄ちゃんに、「ハイッ!」とかわいいバケツを手渡されると、ちゃんと崩れない「砂団子」がつくれるのだから、私も大したものである(笑)。
うまく並べてみせると、そのお兄ちゃん、「よくやった!」とばかりにニッ! と笑いかけてくれる。ちょっとテレて辺りを見回すと、0~2歳の子どもたちと一緒に夢中になって遊んでいるオトナは私だけではない。ピンクのエプロンを着けた保育士さんたちも、腕まくりをして長いトンネルを掘ったり、草むらをのぞき込んでバッタを探したりしている。
そんな光景に微笑みながら、
「みんなが気ままに好きなことをして、でも手を伸ばせば家族と触れ合えて、ゆったりと温かな時間が流れていく。そんな、昔の『茶の間』みたいに安心して和める保育園をつくりたかったんですよ」とつぶやくのは、墨田区施設型小規模保育所A 型「ちゃのま保育園」の代表、宮村柚衣さん。奈良県の出身で、大らかな笑顔と柔らかな関西弁が魅力的だ。
行政書士の資格を持ち、司法書士事務所で働いていたという彼女。いったいなぜ、保育園をやっているの?
「4年前に寿退社をして、2人の子どもに恵まれました。下の子が1歳になり、そろそろ仕事したいな、と認可保育所に申し込んだら『不許可通知』が来て、めっちゃ、めげたんですわ」
ありったけの保育園に当たったが、どこも定員いっぱい。20 ~ 30 人の待機児童がいる状態だった。今から思えば、早めに「保活」をしなかったから仕方がないのだが、「仕事はしたい、けど預かってくれるところがない」というジレンマで、毎日、ウジウジと愚痴をこぼしていた。そんなある日、
「入るとこないんやったら、自分でつくったらええやん」
思わずのけぞってしまいそうな大胆な発言をしたのが、ご主人である。
聞けば、「柚衣ちゃんは、起業したほうがゼッタイええよ」と前々から言っていたというから、妻の才能をいち早く見抜いていたのだろう。
夫もすごいが、「そんなん、無理やわ」と言わない妻もすごい。「その手があったかぁ」とばかりに走り回り、わずか8カ月で開園にこぎつけた。