CASE 1 ドリーム・アーツ 考える力を体験で鍛える! デジタルネイティブ世代の アナログな学び
ソリューション開発を手掛けるドリーム・アーツでは、IT企業であるにもかかわらず、「IT 断食」と称し、実務においてアナログ手法を重視する。
それは、新人の育成施策においても同様だ。
ITだけに頼らない教育が伸ばす力とは。
● 前提 IT依存への疑問
情報技術の進歩は私たちのワークスタイルを大きく変革した。今や会議やプレゼンでのタブレット使用は当たり前。手書きの書類は姿を消し、電話や対面でのやり取りはメールやチャットに変わった。あらゆる情報はウェブ上に転がっており、検索すればよい。便利な世の中になったものである。
一方でこの流れに抗うように、「IT断食」を断行する企業がある。ソリューション開発を手掛けるドリーム・アーツだ。ITと密接な関わりを持つ同社が、あえてITツールを絶つ時間を設け、デジタルな世界と距離を置くのはなぜか。
取締役兼CTO(最高技術責任者)の石田健亮氏は、情報の洪水化による弊害についてこう語る。
「確かにITの進化は、利便性と共に、少し前には考えられないほど大量の情報をもたらすようになりました。しかし、その変化が急激過ぎたこともあり、今の私たちは情報をコントロールしきれずにいます」(石田氏、以下同)
日頃の業務を思い出してほしい。会って話すべき問題についてメールで済ませようとしたために、誤解が生じたことはないだろうか。また、CCで送られてくる大量のメールに紛れ、重要なメールを見逃してしまったことはないだろうか。
インプットされる情報の量が増えるに従い、アウトプットする情報量も増えたが、その質は低下しているのではないか、とも石田氏は指摘する。
一見体裁の整った企画書も、中身はウエブサイトをコピー&ペーストしたもので、現場の実情を踏まえた企画者自身のアイデアが浮かび上がってこないとなれば、それは無駄な紙の束となる。
「ITに依存していると、人は『自分の頭で考える』ことを放棄してしまいがちです。それでも作業は山ほどこなしているので“、頑張って仕事をしている”と勘違いしてしまう。仕事をサポートする道具であるはずのITが、生産性を下げる道具と化しているのです」
同社ではトップの強い意志の下、2010 年よりIT断食の取り組みが行われた。具体的には、・メールの宛先にCCを使わない・メールの文章は“誰が”“いつまでに”“何をする”を明確にする・会議室への個人パソコンの持ち込みは基本禁止とし、議論に集中するなどだ。一時期は、全ての営業部員から生産性を高めるためにパソコンを回収したこともあるという。
IT断食の考え方は、社員の人材育成にも反映されている。というのも、同社の中核業務は顧客の課題を探り、解決策を練り上げることに尽きるからだ。それには現場、現物、現実に触れ、当事者とコミュニケーションを図って課題を掘り下げるプロセスを経なければならない。顧客の問題を「アナログな感覚」で捉えるトレーニングは必須なのである。
● 制度 アナログ式育成で思考力培う
特に力を入れているのは、若手社員を中心とした「アナログ式研修」だ。