外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第4回 せっかく採用した外国人社員を離職に追い込んではいないか?
世界の人材争奪戦において世界に遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。
娘の誕生日か懇親会か?
インドから来たシラジ君は大変優秀なコンピューター・エンジニアです。日本のIT開発会社に勤めて半年ほど経ったある日のこと、先輩の岩田さんから声をかけられました。
「シラジ君、明日の19時から赤坂の鳥平でキックオフミーティングだよ!」「岩田さん、どうしても出席しなければなりませんか? 明日はプライベートな用事があるんですが」「来たほうがいいよ。仕事の一部だからね」「仕事の一部ならどうして就業時間内にしないのですか?」「分かったよ! 来られない理由があるなら来なくていいよ!」
こう言われたシラジ君は茫然とします。実は、その日の夜、娘の誕生日パーティーがあったのです。
結局、シラジ君は「郷に入れば郷に従え」と自らに言い聞かせ、キックオフに出席して、懇親会で美味しくないビールを飲むことになりました。心の中では、家族より仕事を優先した自分を責め、職場を恨んでいました。
ここで皆さんに質問です。シラジ君が家族と仕事、どちらもおろそかにせずに済む方法はあるでしょうか?
次の選択肢から選んで下さい。
①誕生日会を優先させて、キックオフ・懇親会は欠席とし、後日、内容をシラジ君に伝える
②キックオフのミーティング部分だけ参加してもらい、懇親会前に帰宅させる
③誕生日会を懇親会場で行う
③は現実的ではないとすると、残るは①と②ですが、いずれも正解ではありません。外国人はプライベートを大事にするから、と家族との時間を尊重するのはよいことのように思えますが、それでは彼を特別扱いすることになります。
また差別することにもつながります。共同プロジェクトについての情報共有と親睦(団結)の重要な機会を失ってしまうという意味から、機会均等ではなくなってしまうからです。