Story 2 プレーを離れたことで見えてきたもの 車いすから発揮されるリーダーシップ
2015年度の全国高等学校ラグビーフットボール大会、通称「花園」の舞台で、車いすに乗った1人の選手の姿が話題となった。練習中の事故による四肢麻痺というハンディを負いながら、名門校のキャプテンとしてチームを支えた金澤功貴氏だ。
スポーツのキャプテンというと、チームの先頭に立って体を張る姿をイメージしがちだが、車いすの彼はどうやってキャプテンシー・リーダーシップを発揮したのか。
摂南大学に進学して、現在もラグビー部に籍を置く本人に話を伺った。
印象に残ったキャプテンシー
ラグビーを始めたのは、小学校4年の時でした。父親に連れて行ってもらったラグビーカーニバルでトップリーグの試合を見て、「すごいスポーツだ」と惹き込まれたのです。中学生の時は、土日に地元クラブチームの大阪・吹田ラグビースクールで練習していました。そのラグビースクールで中学3年の時に、大阪府スクール選抜でキャプテンをやらせてもらい、全国ジュニア・ラグビーフットボール大会で優勝することができました。
大阪府スクール選抜の練習場は、高校ラグビーの名門である常翔学園高等学校※のグラウンドでした。常翔は自分が中学3年の時に高校日本一になっています。その決勝戦を花園で見たのですが、当時のキャプテンが山田有樹さん(現・同志社大学ラグビー部キャプテン)です。山田さんは、試合中うっかりすると、どこにいるのか見失うぐらい地味なプレーに徹していました。一見目立たないプレーでも相手をしっかり抑えているから、他のメンバーが自由奔放に攻撃できるわけです。
ラグビーのキャプテンシーと言えば、自分が先頭を走ってメンバーを引っ張る姿を思い浮かべがちですが、山田さんはまるで違います。だからこそというべきでしょう、山田さんに対するメンバーの絶対の信頼が伝わってきました。すごいなと感激すると同時に、このチームに入り、キャプテンとして全国優勝をめざそう、と心に決めたのです。
※前身の大阪工業大学高等学校の時代から、ラグビー部は全国大会出場34回を誇る強豪。
首から下が動かない
2013年、念願の常翔学園高等学校ラグビー部に入って感じたのが、圧倒的なレベルの差でした。先輩たちは体が大きいだけでなく、スピードや的確さなど、動きの質が違います。当然、新入りの自分がAチームなどに入れるわけがありません。
どうすれば少しでも差を縮めることができるのか。チームでの練習後、どれだけ自主的に頑張れるかが勝負だと考え、家に帰ってからトレーニングに励み、体重を増やす努力をしました。その成果が出て、夏合宿に入ってようやくAチームで練習できるようになったのです。
事故が起こったのはその矢先のことでした。自分がボールを持ち込んでラック(地面に転がっているボールを、敵、味方が立ったまま組み合って奪い合う状態)ができたのですが、そこで体からではなく頭から転倒してしまったのです。