寺田佳子のまなまな 第8回 主夫芸人・家政アドバイザー 中村シュフ氏に聞く 「笑顔をつくる家事デザイン」(後編)
前回に続き、主夫芸人で家政アドバイザーの中村シュフさんがお相手です。
高校時代に家庭科の素晴らしさに開眼し、大学は家政学を専攻。
卒業後はお笑い芸人に、現在は家庭を支えるプロ主夫というユニークなご経歴には、中村さん「らしい」選択の連続があった、というのが前回までのお話でした。
“シュフ”という一大プロジェクトの世界に、寺田さんがさらに迫ります。
ルーティンを破るべからず
「これからは、男子にこそ家政の知識が必要なのです!」という高校時代の教師の熱い言葉に心揺さぶられ、大学は家政学部に。教員免許を取得し、そのまま家庭科の先生になるかと思いきや、「教師と同じく、周りの人を笑顔にすることができる職業」だからと飛び込んだお笑い芸人の世界。そして、「家庭に入ってください」という彼女からのプロポーズを「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と受け入れ、30歳にして歩み始めた“主夫芸人”としての新たな道。
「面白そうなほうにいく」「誰もやっていないことに挑戦する」、そして「気負わず自然体で飛び込んでみる」。そんな「らしい選択」を重ねて、現在、「主夫」として充実した毎日を送る中村シュフさん。シュフ(=主婦and主夫)の仕事を、マネジャー役である“シュフ”と、サポーター役である“非シュフ”のコラボレーション力で達成する一大プロジェクトである、と独自の視点で分析する。めざすは「家族の笑顔」という目標だ。
そんな中村さんが指摘する、シュフと非シュフのコラボレーションの難しさの象徴が、「スポンジの悲劇」である。
「皿洗いくらい、任せてっ!」とばかりに、得意気にスポンジを取り上げ、洗剤をたっぷりつける非シュフ。そして「キュキュッとね~♪」なんて鼻歌混じりに、フライパンもコップも茶碗も豪快に洗ってみせた暁に、シュフからかけられる言葉は「ありがと~」ではなく、「うそっ!やだっ!」という叫びである。だってシュフにとっては、スポンジといえども家事プロジェクトを成功に導く大事なツール。明確な役割分担があるのだ。一番柔らかそうなソレはグラス用、キレイで可愛いコレは子どもの食器用、そして少々くたびれ気味の固めのコチラは鍋・フライパン用、というように。
このような家事のルール、シュフのルーティンを無視して行うお手伝い、それはもはや自己満足以外の何ものでもないのですと、中村さんは嘆く。