CASE 3 日本レーザー 1つの仕事を2人で担当する「ダブル・アサインメント」を導入 公正な評価と充実の支援 成長意欲を刺激する仕組み
「妊娠・出産を機に退職した女性社員はゼロ」「女性の管理職比率は約30%」。
女性活躍の成功企業として知られる同社には、社員が意欲的に働き成長できる仕組みと、それを支える理念があった。
「社員一人ひとりが大切」という近藤社長に、同社の女性活躍推進の取り組みについて、思いを聞いた。
●背景 ダイバーシティで会社再生
レーザー、光学関連機器の専門商社である日本レーザー。「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」をはじめ、数々の受賞歴があり、ダイバーシティ経営の実践で躍進している企業として知られる。
同社が、ダイバーシティ経営を導入したきっかけは、経営破たんだった。もともとは電子顕微鏡メーカー・日本電子の子会社だったが、親会社から派遣された近藤宣之社長が、会社再生のために、親会社の取締役を辞めて同社の経営に専念する決断をしたのだ。
「当時は人がどんどん辞めてしまい、人材の補充はハローワークに頼るしかありませんでした。応募してきたのは、ハラスメントで退職した女性やリストラにあった中高年、外国人留学生、海外の大学を卒業した帰国者等々、まさにダイバーシティ人材だったのです。でも、さまざまな考え方や経験を持つ人材の魅力は大きい。彼らが、会社から大切にされているという実感を持ち、互いに協力しながら能力を発揮できれば、会社の大きな力になると考えました」(近藤社長、以下同)
●女性活躍の現況 女性が離職せず管理職比率30%
ダイバーシティ推進に舵を切った同社の社員の中でも、活躍が目覚ましいのが女性である。女性は、約60人いる社員の3分の1。20代から60代まで幅広い年代が在籍しているが、自己都合での退職はほとんどない。妊娠・出産により退職した女性も皆無である。また、管理職の3割は女性だ。
「女性の活躍推進の度合いを示す企業のステージは、3段階あるといわれています。第1子の妊娠・出産により退職する女性社員が6割程度いるのが第1ステージ。出産・育児で退職せずに、ほとんどの女性社員が育児をしながら勤務を継続するのが第2ステージ。そして、女性の管理職比率が30%、役員では10%程度という段階が第3ステージです。当社は、この第2ステージは完全にクリアし、女性の管理職も30%いますが、役員はまだいないので、ステージ2.5といったところでしょうか」
役員候補の女性も育っているといい、女性の管理職比率は今後も上昇していく予定だという。とはいえ、決して女性を意図的に登用・抜擢したわけではない。
「仮にそんなことをしたら、男性社員から不満が出ます。職場の公正感・平等感が失われ、社員のモチベーションも低下し、絶対にうまくいきません。全社員を同じ基準で評価した結果として、多数の女性が高い評価を得て昇格していったのです」
では、なぜ同社では、それほどやる気も能力も高い女性が育つのか。その理由を探っていこう。