CASE 1 千葉銀行 男性の育児参加も強力に後押し “お互いさま”の精神を育む 意識・行動改革を積極展開
1986年に、日本の銀行で初めて女性を支店長に登用した千葉銀行。
最近では、佐久間英利頭取が「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」の設立を主導するなど、金融機関における女性活躍推進のフロントランナーとして知られる。
同行が重視しているのが、男性・女性双方の意識・行動改革だ。
“お互いさま”の精神を醸成することで、不公平感なく、積極的に支援し合う風土を築いている。
●基本的な考え方 皆が“お互いさま”の意識を持つ
「『ダイバーシティ推進=女性の仕事と家庭の両立支援』と捉えられがちですが、そうではありません。男性も女性も働くのであれば、双方が家事・育児をするのは当然です。また、仕事と介護という面で見れば、独身者を含め、全ての人が関係してくる。『30~40代の女性を管理職にするためのものだろう』と言う人もいますが、それは違います。多様性を受け入れ、新たな発想を組み合わせて持続的な成長につなげる経営戦略だという意識を、職場全体に根づかせる必要があります」
こう語るのは、ダイバーシティ推進部調査役の山本悠介氏。“一部の人”に対する“支援策・優遇策”と捉えるから、不公平感が生まれる。全ての人を対象にした会社の成長戦略と位置づければ、協力し合うのは当然だ。
「一方で、育児などの支援制度を利用する人には、『権利ばかりを主張しないでください』と繰り返し訴えています。もちろん権利はありますが、権利を行使するうえでは、『周りの人もそうかもしれない』『周りの人に助けられている』という意識が求められます。精いっぱい働いている人が早く帰らざるを得ない事情を抱えていたとしたら、周囲も『帰っていいよ』と声をかけるでしょう。結局、その人の仕事への向き合い方が問われるのです」(山本氏、以下同)
制度を利用する側にも、サポートする側にも、双方に“お互いさま”の精神を持たせる―この考え方が、同行の取り組みのベースにある。
●取り組みの背景 内外の環境変化に対応
同行が女性活躍推進に本格的に取り組み始めたのは、10年以上前だ。社会全体で女性の活躍を支援する必要性が叫ばれ始めた当時、銀行業界では、投資信託や保険の販売が認められ、業務の多様化が進んだ時期だった。団塊世代の大量退職を控えていたこともあり、職員の4割を占める女性のさらなる活躍が期待されていた。
2005年、女性活躍推進の理念を定めた「女性いきいきキャリアアップ宣言」を公表すると共に、一般職を廃止して、総合職と特定総合職(転居を伴う異動がなく、一部業務は担当外)に再編するなど、女性活躍を推進する施策を積極的に導入してきた。
その後、取り組みの対象を女性だけでなく多様な環境・状況下で働く職員にまで広げるため、2015年3月に「ダイバーシティ行動宣言」を策定。現在はダイバーシティの推進が進められている。
●推進体制 専門の委員会と部署を設置
ダイバーシティの推進体制は図1の通り。ダイバーシティ推進に関する企画はダイバーシティ推進委員会で検討し、ダイバーシティ推進部が人材育成部と連携しながら形にしていく。
ダイバーシティ推進委員会は、企画管理部門のトップである企画管理本部長を委員長に、男女各1人の部長を副委員長に据え、メンバーは指名と公募により選出した。各部会は、女性管理職が部会長となり、女性3~4人と男性1人のメンバー、3人程度の女性アドバイザーで構成する。年齢・役職など幅広いメンバーで、本部だけでなく営業店からも参加している。