SPECIAL OPINION “休むため”から“ 働くため”の両立支援へ 育児中の女性をひとくくりにしないで! 働く女性が本当に望む支援とは
「現在の日本企業では、両立支援制度が充実していることで、かえって意欲のある女性がやる気をなくしてしまうことがある」―。そう指摘するのは、自身も仕事と子育てを両立する、女性活用ジャーナリストの中野円佳氏。女性活躍推進のミスマッチは、なぜ起きるのか。
著書『「育休世代」のジレンマ』でこの問題を社会に知らしめた中野氏に、育児中のワーキングマザーの本音と問題解決のヒントを聞いた。
変わり始めた企業側
育児中のワーキングマザーを取り巻く環境は、この5年程度でも大幅に変化していると感じる。
まず、私も含め2010年ごろまでに出産した総合職女性はまだ企業の中ではマイノリティだったと思う。企業側の「無配慮」により出産前と同じ働き方を求められ、辞職せざるを得ない事例も多かった。または、育児中の社員だからもっと負担の少ない仕事に変えたほうがいいだろう、というような「過剰な配慮」により、以前のようなやりがいのある仕事をすることができず、「何のために子どもを預けて働いているのか」と疑問に感じ退社するパターンもあった。働き続けるには、自身の意欲を冷却し、「第一線で働けないことは仕方がないことだ」と気持ちをコントロールしなければならない。しかし、そうすると今度は評価されづらい悪循環で「マミートラック」に追いやられていく(図1)。
最近は、育児中でも働き続ける女性社員が増えてきて、衝動的に辞める社員は減っているといえるだろう。総合職などでも出産する女性が増える中、安倍政権による女性活躍推進の施策や人手不足の環境も後押しとなり、企業側の意識も変わってきている。親かベビーシッターをフル活用しながら家庭と仕事を両立させる、いわゆる“バリキャリ”ではなくても、働き続けられる時代にはなってきた。
だが、意欲のある女性が、やりがいを感じられない仕事にフラストレーションを抱える状況は、むしろ強化されている印象もある。特定の部署にママ社員が溢れていたり、支援制度を使いながら働く女性に対して他の社員から不公平感が生まれたりして、企業側も対応に困っている。