巻頭インタビュー 私の人材教育論 重要なのはビジョンへの共感。 それ以外は多様でいい
グループウェア事業で、国内トップシェアを誇るサイボウズ。
「世界中のチームワーク向上に貢献する」を使命として、製品の国際化とグローバル市場への進出を進めている。
同社を率いる青野慶久社長は「人は多様であることを受け入れて、制度や風土をつくる必要がある」と明言。
実際に、9種類の選べる働き方を用意し、自身も三度の育児休暇を取得している。
その柔軟な考えの源泉と、実践の秘密に迫った。
いいグループウェアを世界に
―御社はチームのナレッジマネジメントやコラボレーションに寄与するグループウェアを提供しています。そうした中、今、必要としているのはどのような人材ですか。
青野
私たちがめざすのは、いいグループウェアをつくって世界に広げること。ですから、いいグループウェアをつくれる人、それを日本や世界に広げられる人がほしいという思いが基本にあります。
加えて特に今、必要としているのはマネジャーです。会社を大きくしようとしているわけではないのですが、事業を続けていく中で人が増えてきて、現在では派遣の方を含めて600人が弊社で働いています。この規模になると、一定数のマネジャーがいないと事業を維持できません。
ところが、最近の若い人はマネジメントを担いたがらず、こちらから“お願い!”と言って引き受けてもらっている状況です。
―どのような方をマネジャーに抜擢するのですか。
青野
見極めるポイントはいろいろありますが、何より大切なのはビジョンを理解していること。最初にお話ししたように、弊社のビジョンは、「いいグループウェアを世界に広げる」こと。そのゴールを真に理解して、それを体現するために必要な組織をつくる力が求められます。
時と場所に縛られない働き方
―御社のビジョンを体現する組織とは、どのような組織ですか。
青野
一言でいえば、「多様性のある組織」です。もともと従業員は一人ひとりが全く違う存在です。それを一律の規則で縛りつけるのではなく、それぞれ自分らしく働いてもらいます。多様な個性を持つ人が集まれば、会社のあちこちで個性がぶつかり合って議論が起こります。そのほうが面白いじゃないですか。
―具体的には、どのように組織の多様性を担保するのでしょうか。
青野
まず働き方の多様性を認めることです。働き方は、働く時間の長さによって3種類、働く場所の自由度によって3種類のコースを用意。掛け合わせて9種類から自由に自分の働き方を選べます。
2015年10月の段階では94%の社員が残業ありのコースを選択しました。残業なしのコースを選ぶのは、育休明けの社員が多いです。もちろん生活環境の変化に合わせて途中からコースを変更することも可能です。
また、働き方のコースとは別に、短期的に働く時間や場所を変更できる「ウルトラワーク」を始めました。
例えば普段オフィスに出勤する人が在宅で仕事をしてもいいし、東京の社員が週末旅行と仕事をセットにして、全国に11カ所ある他の拠点のオフィスで働いてもかまいません。
―育児休業制度も充実しているそうですね。青野社長ご自身もお取りになったと聞きました。
青野
育児休業制度は最長6年間。おそらく日本最長です。産前休暇や育児短時間勤務は妊娠判明時から取ることができます。私も第一子と第二子の時に育児休暇を取り、2015年は第三子が誕生したので半年間、16時までの短時間勤務でした。
それまで定時前に帰る社員は申し訳なさそうにしていましたが、私自身が早く帰るようになって社内の空気も変わりました。今は時短のママやパパも、元気に帰っていきます。