おわりに 大切なのは、評価は成長のために行うものという “共通認識”と“コミュニケーション”
制度導入の障害は“覚悟の欠如”
グローバル規模で優秀な人材を活かしていくためには、グローバルに対応する人事制度を設けなければならない。だが、多くの企業で人事制度、特に“評価制度”が整っているとはいえない状況だ。例えば、日本の年功序列・終身雇用を前提とした評価や昇進の仕組みが納得できないと、離職していく外国人材も多い。だからといって、極端な成果主義の評価制度を日本企業に導入しようとすると、今度は従来の制度に慣れ親しんだ日本人の反発を招いてしまいがちだ。
早稲田大学政治経済学術院教授の白木三秀氏(OPINION1、26 ページ)も、グローバル人事制度の導入が進まない理由のひとつに、日本人の「覚悟の欠如」による反発を挙げている。覚悟とは、世界共通の尺度で能力を測ることを受け入れる覚悟、外国人材との競争を生き抜くだけの覚悟である。彼らが競争相手に加われば、現在の自分のポジションが奪われたり、報酬が下がったりしてしまうリスクもある。それを受け入れるのは、容易なことではないだろう。
このような状況の中でグローバル評価制度の導入を進めていくために、白木氏は以下の2点が必要だと訴える。まず、現場のミドル・シニア層も含め、全社一丸となって次世代人材の育成に当たること。そして、人事部門がHRのプロフェッショナルになることである。グローバル拠点の各社に自社の方針、自社にとっての最善策を明示し、地域の人事担当者と議論をする力、これが本社の人事部門に求められているという。
グローバル制度導入が進む企業
この2点と重なる施策を行っているのが、2010 年から英語の社内公用語化を進めている楽天である(CASE1、38ページ)。同社では、行動基準“楽天主義”に関わる11のキーワードで評価項目を設定する「コンピテンシー評価(Global Grade)」と業務を通じて役割を果たせたかどうかを見る「パフォーマンス(成果)評価」を行う。
海外のグループ会社に共通の評価制度を導入するにあたり、本社人事部門は、これがいかに企業の成功のために必要か納得してもらうことに注力した。そのために、テレビ会議におけるディスカッションなど密にコミュニケーションをとりながら、グループ会社の理解を深めていった。制度導入後は、能力や成果を平等に評価できるようになったと、グループ企業からも好評という。