CASE 2 日立製作所 人財マネジメントの在り方を変える グループ・グローバル共通の評価 「グローバル・パフォーマンス・マネジメント」
2009年3月期に過去最大の最終赤字に陥るも、大胆な経営改革を行い、V字回復を果たした日立製作所。
同社が2011年から強力に推進しているのが、“グループ・グローバル共通の人財マネジメント”の構築だ。
その一環で導入された評価制度が「グローバル・パフォーマンス・マネジメント(GPM)」。
導入から現在の運用状況に至るまで、話を聞いた。
● 背景 “One Hitachi”による成長を推進
日立製作所は、2013年度にスタートした3カ年計画「2015中期経営計画」において、「グローバル・メジャー・プレーヤー」になることを宣言。当時41%だった海外売上高比率を50%超に引き上げる目標を掲げた。国内マーケットが縮小する中、さらなるグローバル化によって業績拡大を図る狙いだ。このことが、グローバル人財マネジメントを推進してきた背景にある。
「IBMやGE、シーメンスなどと肩を並べる会社をめざしたわけですが、では、成長の源泉をどこに求めるかというと、海外に出ていくしかありません。そのために、2012年度実績で12万人弱だった海外人員を3年間で15万人まで増やす計画を立てました。年に1万人増やすというのは大変なことですので、それを支える人財マネジメントの仕組みが必要と判断しました」
人財統括本部グローバルトータルリワード部部長の飯塚毅氏は、こう説明する(以下、飯塚氏)。
2003年にIBMのハードディスクドライブ部門を買収するなど、海外でのM&Aを活発化したことも大きい。買収先を含め、自社が主導権を握って経営していくためには、事業戦略の面でも財務の面でも、そして人財マネジメントの面でも、グローバル・オペレーションが不可欠だった。
“グローバル”共通という視点に加え、“グループ”共通というのも、同社にとって大きな転換だ。同社は伝統的に事業の独立性が高く、人事制度についても、企業ごとに個別の制度を設けていた。これを共通化していこうというのだから、並大抵のことではない。
「一番のきっかけは、リーマンショックです。グループ各社が個別最適をめざすやり方では限界がありました。見方を変えると、これだけ広い事業部門を持つ企業集団は世界でも珍しく、その強みを生かせば、さらなる成長が期待できます。2009年のカンパニー制導入を皮切りに、グループ約900 社の力を結集した“One Hitachi”による経営に大きく舵を切りました」
● 施策 役割と成果に応じて処遇
まず行ったのが、「グローバル人財データベース」の構築だ(図1)。海外の直接員を除くグループ従業員約25万人の人財情報をデータベース化した。それ以前は、国内のグループ会社ですら、どの会社にどういう職務に就いている人がどれだけいるかが本社からは見えていなかった。それを“見える化”することで、グループとして打つべき策を考えられるようにした。
そのうえで、国内外の管理職以上約5万ポジションについて、担う役割の大きさをグローバル共通の尺度で格付ける「日立グローバル・グレード」を導入。コンサルティング会社による4 要素・10項目の基準で測定し、ポジションごとの役割(職責)の大きさを明確化した。
日立製作所本体では、2012 ~ 2013年の2 年間で、国内の全管理職(課長相当職以上)約1万1000人の格付けを行い、2014 年10月に、旧資格制度(4階層の職能資格)を廃止して7段階のグレードに移行。処遇制度も、資格と職位に基づく月例賃金を「グレード給」(グレード別レンジ給)に刷新し、役割と成果による処遇の徹底を図った。