巻頭インタビュー 私の人材教育論 育成のキーワードはグローバル化、 リマーケティング、技術革新
技術革新が進み、市場環境が大きく変わろうとする今、IT 業界にはこれまでには求められなかったさまざまな力が必要とされている。
急速に海外売上比率を伸ばすNTTデータは国内、海外事業を担う新たな人材像をどう描くのか。
不透明な未来において価値を生み出せる人の育て方を、岩本敏男社長に聞いた。
売上高1.5兆円企業に
―2016年3月期は中期経営計画の最終年です。これまでを振り返ってみていかがですか。
岩本
当社は日本電信電話公社のデータ通信本部として50年ほど前にビジネスを始めました。NTTから分社化したのは28年前で、以降、毎年増収を続けましたが、この中期経営計画(以下、中計)でも成長を継続すべく2つの目標を掲げました。
一つは、「グローバルトップ5」です。中計を立てた4年前は、アメリカの調査会社ガートナーの売上高ランキングで世界6位でした。残念ながらその後の円安の影響でドル換算でのランキングは下がりましたが、トップ5入りの目安にしていた売上高1兆5000 億円は1年前倒しで昨年度達成し、さらに今年度も増収を見込んいます。
もう一つは「EPS(1株当たり利益)200円」。たとえ売上が増えても、中身が詰まっていなければ仕方がありません。EPSに関しては、当初の目標を達成できるよう頑張っていきたいと思います(3月29日取材時点)。
グローバル人材は価値観の橋渡し
―目標達成に向けて、どのような取り組みをされてきたのでしょうか。
岩本
キーワードを挙げると、「グローバル化」「リマーケティング」「技術革新」の3つです。
これらはこの中期経営計画で進展して成果が出ていますが、今後も引き続き取り組んでいくべき課題だと認識しています。
―それぞれのキーワードの意味を教えてください。まず「グローバル化」についてはいかがですか。
岩本
当社はグローバル戦略のファーストステージとして海外売上比率25%を掲げていましたが、2013年度で達成。現在は30%を超えて、エリアも42カ国まで広がっています。
グローバル展開の素地はできたので、次はセカンドステージとして、国内と海外の売上比率を50:50に持っていきたいと考えています。コミットメントした数字ではありませんが、現在国内の売上高が1兆1000 億円弱なので、海外の売上高も1兆円の大台に乗せたい。3月に米デルのITサービス部門の買収を発表しましたが、これもセカンドステージに向けた施策の一環です。
―グローバル戦略は順調に進んでいるように思われますが、人材面でご苦労はありましたか。
岩本
当社が考えるグローバリゼーションは4段階あります。まず、国内の仕事のグローバル化です。例えば官公庁のシステム開発は国内ですが、それに使うハードやソフトは海外製品を含めてベストプラクティスを知っておく必要があります。次はオフショア開発です。国内のシステムでも、中国など海外に開発を出すことでコストを抑えられます。3段階目は、日本企業が海外進出する時の支援。そして最後が、海外のローカルマーケットでローカルのお客様とビジネスをする段階です。
最も苦労したのは最後の段階でした。製造業なら日本から製品を持っていったり、現地に工場を建ててそこのスタッフに製造技術を教え込み、良い製品を作ったりしてローカルのビジネスを実現できます。しかし我々のようなサービス業は同じようにはいきません。日本人が日本向けのサービスを提供してもお客様に相手にされるとは限らないので、結局、営業や開発デリバリー部隊はローカルの人材に任せざるを得ない。