人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第44回 『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』川西玲子氏 時事・映画評論家
「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」
2010年 アメリカ 監督:チャールズ・ファーガソン
『インサイド・ジョブ』は、多くの人の生活を破綻させ、世界を混乱に陥れたリーマンショックが起きた背景と、その責任追及が曖昧なまま終わっていく経過を、関係者の証言を交えて暴くドキュメンタリー映画である。
話は1970年代にさかのぼる。アメリカは当時まで、製造業を中心に堅実な成長を続けていた。投資銀行には共同事業者が出資し、資金運営に目を光らせている。彼らは利益を求めたが、博打はしなかった。
だが80年代、金融業界が急成長して経済の中心になる。それを後押ししたのは規制緩和だった。
81年に就任したレーガン大統領は、財務長官にメリルリンチのCEOであるドナルド・リーガンを選んだ。そして、金融業界と政権の癒着が始まる。金融業界は豊富な資金で学者を抱き込み、多くのロビイスト(政治活動の専門家)を動かすようになった。