CASE 2 良品計画 効率化のウラに経験学習あり チームで振り返りを習慣化する マニュアルと改訂の仕組み
「無印良品」ブランドを展開する良品計画では、全部門で
業務効率化のためのマニュアルと、それを常に改善する仕組みがある。
業務を明文化し、常に見直すために、社員やチームで自分たちの仕事を振り返り、学んだことを次のアクションに生かすという組織的な経験学習サイクルが回っている。
いかにしてそれが可能になったのか、経緯や秘密を探った。
●概要 マニュアルと経験学習
『無印良品は、仕組みが9割』などの、同社前会長・松井忠三氏の著書を読んだことがある人も多いだろう。書名通り、同社では徹底した仕組み化が行われてきた。
「仕組み化」には、業務のマニュアル化が含まれる。販売店舗のマニュアルは「MUJIGRAM」(ムジグラム)、本社業務のそれは「業務基準書」と呼ばれるものだ。
2つはそれら自体が、常に社員やチームが仕事を振り返り、改善する仕組みでもある。
ここに、同社の組織的な「経験学習」があるといえる。
●「MUJIGRAM」とは 本当に使える店舗マニュアル
店舗マニュアル「MUJIGRAM」から、その仕組みを見ていこう。
MUJIGRAMは無印良品の全ての店舗のバックルームに必ず並んでいるA4サイズのバインダーだ(デジタル版もある)。2000年に作成が開始された。「売り場に立つ前に」「店内業務」「売り場づくり」などテーマ別に分けられ、全部で13冊ある。商品のディスプレイ、接客、発注など店舗での業務が網羅されており、総ページ数は約2001ページにおよぶ。
MUJIGRAM以前にも、「店舗運営基準書」が作られていたが、本部主導で作られたため活用されず、埃をかぶっていたという。
しかし松井社長(当時)の危機感から後押しされた強烈なトップダウンで、効率化の1つの策として、店舗運営に関する“血の通った”マニュアル作りが行われたのだ。
現場で使われるものにするにはやはり、現場の人間が作らなければと、ベテランの店長が委員に任命され、作成が始まった。
「全店舗のスタッフから意見を募り、半年がかりで現在の形にまとめ上げました。その後も改訂を重ねており、現状は年間1万件の意見を基に、更新を行っています」と語るのは、MUJIGRAMの改訂やメンテナンスを担当する業務改革部・店舗サポート課の課長代行、光武秀一氏である。
●店舗での使われ方
店舗では、アルバイトも社員も店長も、日々の業務の中で何か困ったり迷ったりすることがあれば、すぐにMUJIGRAMを開く。そして、必要なことが書かれていない時や、書かれている内容が実情と違っていたら本部に連絡・提案をするという。
OJTも、MUJIGRAMをベースにするため、誰が教えてもブレが最低限になる。同じく業務改革部・店舗サポート課の城内達朗氏は言う。
「新人教育にもMUJIGRAMを活用しています。まずは1冊目の『売り場に立つ前に』で、社内の基本ルールから、出勤時にすること、笑顔のつくり方、挨拶の仕方などを覚えていくんです」
新人はまずは1冊目をマスターし、そこから2冊目、3冊目と順番に進みながらスキルアップしていけるような構成になっている。
「どの店のスタッフも及第点レベルには、すぐに育ちます」(光武氏)
●記述のポイント①
MUJIGRAMの記述には、ポイントが2つある。1つは、仕事の流れに沿って誰にでも分かりやすい書き方になっていることだ。
「例えば自転車販売の場合、以前は組み立て方やパーツの解説は商品部、盗難保険の手続きは法務部、配送の段取りは物流、レジ打刻については販売部と、各担当部門がそれぞれ別のマニュアルを作っており、スタッフはそれらを一つひとつ見なければなりませんでした。これでは使われなくなるのは当然です。そこでMUJIGRAMで“自転車承り”というタイトルにまとめ、仕事の流れに沿った書き方に改めました」(城内氏)
内容によっては写真も使いながら美しくデザインされており読みやすい。章立ても工夫され、知りたいことがすぐに見つかる。