巻頭インタビュー 私の人材教育論 良質なサポートビジネスの鍵は 尊敬・革新・笑顔のマインド
IT化や急速なグローバル化の潮流の中で、企業を取り巻く環境は、ますます複雑化し激変している。
コールセンターやITサポートのアウトソーシングサービスを担う富士通コミュニケーションサービスも、ITアウトソーシングサービスからCRM(顧客関係管理)アウトソーシングサービスへと幅を広げてきた。
その転換や継続したサービスを支える組織として「ユニークな個性あふれる企業づくり」を推進するのは、社長の乙黒淳氏だ。
具体策を聞いた。
変化なくして成長なし
―富士通コミュニケーションサービス(CSL)は、企業向けサービスプロバイダーとしてスタートし、2014年に創立20周年を迎えました。「顧客のビジネスに貢献する真のパートナーとなる」と標榜していますが、今後の経営の方向性については。
乙黒
当社が設立された1994年は、マイクロソフトのWindows95が世に出る約1年前です。最初の10年間は、提携したアメリカのストリーム社のビジネスモデルを取り入れテクニカルなサービスを行い、次の10 年は富士通系のパソコンのサポートなどを大きなプロジェクトとして行ってきました。これからは自主ビジネスを拡大していこうというのが大きな流れです。
例えば、クラウドやビッグデータなど、我々を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。その真っ只中にいるのが我々のビジネスですから、我々自身が変化していかなければなりません。社会の変化に対応し、我々も変化する―これが当社のベーシックな考えであり、変化の流れが速ければ速いほど、我々も速く変化していかねば生き残っていくことができません。変化なくして成長はない、というわけです。
―「顧客接点」も重視されています。
乙黒
クライアントは多種多様な業種・業務の企業です。しかし、お客様と触れ合う「顧客接点」というビジネスプロセスを我々がアウトソーシングで受けている、ということは共通しています。
そこで、顧客接点における運用サービスを「顧客接点BPO(Business ProcessOutsourcing)」と定義し、人とICTが高度に融合し卓越したサービスを提供することにより、お客様の成功に貢献することをめざしています。
では、その顧客接点BPOを、どう進化させていくのか。その進化を実現させるのが我々の人と組織の変化であり、人材育成であるということができるでしょう。
“CSL Statement”
乙黒
当社は、ハードを作っている会社ではなく、100%、サービスを提供する会社です。サービスは基本的には人が提供するもので、サービス=人、に他なりません。そういう意味で100%、「真実の瞬間」の会社と言っても過言ではないですね。
「真実の瞬間」とは、1980年代、スカンジナビア航空が経営再建に取り組んだ際のキーワードで、同社を復活させた要因の一つとなったものです。経営コンサルタントのリチャード・ノーマンが提唱し、当時のヤン・カールソン社長兼CEOが書いた著書『真実の瞬間(邦題)』で注目されました。一言でいえば、「顧客は、その企業に接する瞬間(ほんの短い時間)で、その企業のサービス全体に対する良し悪しを判断する」ということです。
お客様にとって当社のコールセンターで電話対応を行うオペレーターのAさんは、まさに我が社を代表しており、一言一言、一秒一秒が真実の瞬間なのです。
そこで、どんな人材が望まれるかについて、20周年を機に「CSL Statement」を制定しました(左ページ写真)。
CSL Statementは当社のビジョンと価値をまとめたものです。「OurVISION」「Our PROMISE」「CSLMIND」の3つから成ります。
そして、CSL MINDでは、大切にする行動原則として「Respect」「Innovative」「Smile」を挙げています。真実の瞬間を意識してサービスを最大限に素晴らしい品質にするためには、自分を取り巻く人々に対するリスペクトマインドが必須であり、変化し成長するためには、今の自分を変え、絶えず新しい価値創造にチャレンジする、すなわちイノベートすることが重要です。また、自分自身がビジネスを楽しむという気持ちがないと良いサービスは提供できません。必然的に笑顔(Smile)が大切になるのです。