JMAM通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 渡辺パイプ ジョブグレード制に通信教育を 組み込み自主的な学びを仕組み化
水と住まい、そして農業の領域で事業を展開し「元気で快適な生環境」づくりに取り組む渡辺パイプ。
同社は人事制度を整備して「ジョブグレード制」を導入。
そこに通信教育を組み込み、Webを使った受講促進の仕掛けも施して効果を上げている。
フロンティア精神がDNA
渡辺パイプは、1953年に鉄管・継手・バルブとその付属品販売業としてスタートした。創業者の渡辺次祐氏は「誰もやっていないことをやる」というフロンティア精神の持ち主で、幅広い商品を取り扱った。当時はパイプ専業、バルブ専業というように店ごとに専門取扱商品が決まっているのが業界の常識であった。さらに、客は自分の足で買いに来て現金で払うのが当たり前の時代に、注文を電話で受け付け、掛売りを行い、商品を客先まで配送した。現在でいうワンストップ・ソリューション、顧客第一主義を、当初から行っていたのだ。
豊富な品揃えとかつてない顧客サービスは評判を呼び、北関東、大阪、九州と瞬く間に出店エリアを広げていく。水の領域で培ったパイプの技術を応用して、温室栽培用のハウスを開発。現在の「水と住まいの事業」「グリーン事業」の礎が出来上がる。1972年には年中無休で商品の引き取りができる管材専門店を千葉と宇都宮に出店した。アメリカの雑誌に掲載されていたコンビニエンスストアの記事に触発されたもので、画期的な店の開業はマスコミでも大きく報じられた。セブン・イレブン1号店が開店する2年も前の話である。こうした創業者のフロンティア精神は、渡辺パイプのDNAとして根づいている。
「セディアシステム」の確立
管材事業のリーディング・カンパニーとして全国に支社・支店を設けていた同社が、大きな転機を迎えたのは1994年。顧客、メーカー各社をはじめ、関係者全てにメリットがある仕組みを築き上げなければ業界全体の未来はないと、抜本的な改革に取り組んだ。
その「革新への挑戦」を象徴するシンボルとして生まれたのが、同社の事業コンセプトSEDIASYSTEM(セディアシステム)だ。Service & Engineering DialogueSystem、「サービスと技術で対話するシステム」を意味し、渡辺パイプがめざす商品、サービス、ネットワーク、人、その全ての品質と信頼の証として、大切にしている。
セディアシステムのもと、全社員が1つになるように名刺大のフィロソフィー・カードを作成した。そこには企業理念、行動指針と共に「とことん、こだわれ!」の文字が刻まれている。同社の社員は全員が、常にこのカードを携行し、ことあるごとに見返しているという。
自らの価値を高める学び
セディアシステム確立と同じ頃に、人材育成の在り方についても見直しを図った。急速な拠点の拡大に伴って通信教育を導入したのだ。
導入の経緯について、執行役員総務人事ユニットリーダーの田辺徹氏は、次のように述べる。
「全国展開によって物理的に集合研修が難しくなったという事情もあるのですが、何よりも多様なメニューからコースを選択し、自己価値を自ら高める学習スタイルが、当社のチャレンジを大切にする価値観に合致したのです」
95年からは「ホームステイ研修」もスタートした。これは“お客様のことを知る”という目的で、新入社員を4週間、客先である工事店に預け、現場業務に従事させるという研修だ。新入社員のうちに顧客の日々の業務内容を覚えさせることに加えて、工事現場のニーズや悩みを肌で感じさせる狙いがある。これまでに1000人を超す新入社員が、このプログラムを修了している。