人材教育最前線 プロフェッショナル編 新しい「つなぐ」を生み出す人材で 世界のものづくりに貢献
あらゆる工業製品で使用されているねじをはじめとした締結部品を、ものづくりの現場に供給しているねじ専門商社のリネックス。2015年に創立50周年を迎え、次の50年に向けた新たなスタートを切った。そんな同社で、若手教育を中心に教育体系の構築を牽引してきたのが、管理本部総務人事グループマネージャーの武笠修治氏である。商社のビジネスを支えるのは、他でもない社員だ。広く社会に貢献し、企業価値を高めることのできる人材の育成に日々邁進している。
講師時代の経験を生かす
武笠氏がリネックスに中途入社したのは2004 年。前職では、教育関連企業の人事部で新卒採用を担当し、講師としてスクールの教壇に立った経験もある。
リネックスへ転職した理由は2つ。企業規模が大き過ぎず幅広い仕事を担えるという魅力と、ねじ業界がさまざまな産業を支える基幹産業であることに社会貢献度の高さを感じたからだ。
前職での経験もあり、入社後、まず任されたのは新卒採用担当だった。その頃、リネックスは新卒採用の在り方を見直し、より一層力を入れ始めた時期だった。
「新卒の採用には多くの基準がありますが、私が特に重視しているポイントが3つあります。1つめは、言われたことをやるだけではなく、自分の考えや主体性を持った人物かどうかです。そしてリネックスには、若いうちから仕事を任せ、実力よりワンランク上の業務を与える社風があります。ですから自分で考え、行動できるか。それに当てはまるような経験が学生時代にあったかを見ています。
また、創業時から不変の行動規範である、『時代を先取りする洞察力』『自らニーズを発掘する鋭敏な行動力』『限りない創造に向けて挑戦する勇気』、こうした気持ちを持って仕事に取り組める人材かどうかが2つめのポイントです。
そして、3つめが“素直さ”です。例えば、突っ込まれた質問に答えられなかったら、素直に『勉強不足で分かりません』と言えるかどうかです」
これは、前職の講師時代に実感したことだという。恥ずかしさからか「分かりません」と言えない生徒よりも、「分からないので教えてください」と素直に言える生徒のほうが飲み込みが早く、成長も早かった。
「社会人1、2年目は教えてもらうことのほうが多い。その時、素直に聞ける人、相手の指摘も真摯に受け止めることができる人、お客様の前でもいい加減なことを言うのではなく、『すみません、分かりません』と誠実に対応できる人。そういう人は周囲も受け入れやすいものです」
今でも、講師時代に多くの生徒を見てきた経験と、「学ぶことをやめた人は誰でも老いている。学び続ける人は誰でも若い」というヘンリー・フォード(フォード創業者)の言葉が、武笠氏の人材教育の根底にあるという。
採用と育成のリンク
武笠氏が採用担当となった当初、採用の方向性はあったものの、明文化された基準やマニュアルはなかった。もちろん、就職媒体への掲載や大学との関係などもないに等しい状態だった。
そこで、会社のビジョンに沿った人材を採用するために、社員の適性検査の分析を行い「社員の強み・弱み、社員の特徴、どんな人材がこれから必要か」などについて、全国の事業所の責任者にアンケートを取った。
「すると、採用基準に関する回答だけでなく、人材育成に関する要望が多数ありました。中でも多かったのが、若手を中心に営業や商品の研修を充実させて、勉強する機会を与えてほしいというものでした。事実、新入社員は新人研修後に全国の事業所に配属していましたが、後は現場任せになっていたのです」
アンケートから現場のニーズもつかんだ武笠氏は、この時、採用と育成は個別に扱うものではなく、常にセットで考えるべきだと確信。会議の場で、採用とその後の育成をリンクさせるような教育の充実について提案すると、即、教育体系の構築を任された。経営トップ直轄のプロジェクトとしてリーダーに抜擢されると、教育プログラムを見直すためにまず営業や購買など各部門のマネジャーに声を掛けた。