おわりに “健康な人づくり”という 新しい経営戦略
「人手不足時代」「医療費増大時代」が到来する。総務省の統計によれば15 ~ 64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどり、2040 年には約5800万人となる見込みだ。一方、75歳以上の後期高齢者は2025年、2200万人に達する。「健康経営」はそんな時代を乗り越えるための切り札として注目されている。
米国で、経営学者ロバート・ローゼンが「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」と唱えたのは1980年代。以来、従業員の健康づくり、データベースに基づいた予防活動が広がった。日本で「健康経営」を初めに提唱したのはNPO法人健康経営研究会の理事長、岡田邦夫氏である。同法人では、健康経営とは「経営者が従業員とコミュニケーションを密に図り、従業員の健康に配慮した企業を戦略的に創造することによって、組織の健康と健全な経営を維持していくこと」と定義している。
従業員の健康づくりによって、活力を上げ、生産性やイノベーションを引き出す。健康で生き生きと働ける人材が増えれば、それだけ企業価値は上がるだろう。結果的に企業イメージが向上し、株価や採用といった面でメリットも得られる可能性も高まる。つまり、健康経営とは、単なる労務安全衛生や医療費抑制の手立てではなく、“経営戦略”でもあるのだ。
特集では健康経営を知るうえで重要なキーワードが3つ登場した。順に見ていこう。