CASE 3 コニカミノルタ コラボ・ヘルスと 健康レベルに合わせた取り組み
経済産業省と東京証券取引所が2015年に発表した「健康経営銘柄」で、電気機器部門の初代銘柄に選ばれたコニカミノルタ。
同社では、人事部と健康保険組合のワンマネジメント体制により、一人ひとり異なる社員の健康状態に合わせた、きめ細かな運営を行う。
それを可能にする秘策とは。
●背景 企業と健保の利害が一致
コニカミノルタが同社人事部と健康保険組合(健保)のコラボ・ヘルスによる一体運営を開始したのは2012年のこと。その経緯は2008年にさかのぼる。
後期高齢者医療制度が開始されたこの年、納付金による健保の支出額は大幅に増加し財政を圧迫した。しかし、健保の経営が厳しくなった理由はそれだけではないと、人事部健康管理グループリーダー兼同社健康保険組合常務理事の鈴田朗氏は振り返る。
「当時、社員の長時間労働の常態化、従業員の高齢化に伴う生活習慣病患者と予備軍の増加、メンタル不調による休職者の増加が問題となっていました。体調不良を訴える社員が多ければ医療費はかさむため、財政状況の悪化は健保の経営課題でした。一方で企業側は、十分にパフォーマンスを発揮できない社員を抱えていることによる生産性の落ち込みを懸念していました」
その後も健保は財政健全化に向けてさまざまな対策を講じたが、2011年に保険料引き上げを余儀なくされた。また、企業側は長時間労働対策などに取り組むものの、課題改善に向けた新たな切り札を出せずにいた。
「企業と健保、それぞれが抱える課題は異なりますが、『社員の健康度の向上』が解決への糸口となる点で一致しました。そこで、互いに協力し合える体制づくりを進めたのです。組織や社員の状況をよく知る企業と、健診や医療のデータ、健康に関する情報が集まる健保、双方の持ち味を生かした組織体系に変更しました」(鈴田氏、以下同)
それに先駆け、2011年には経営トップによる「コニカミノルタグループ健康宣言」を発表。健康第一の企業風土の醸成を明文化した。さらに会社の中期経営計画に合わせ、2014 年から3カ年の健康中期計画「健康KM2016」を策定した。
健康KM2016では、1)健康リスク者のミニマイズ化、2)健康ムーブメントの2大テーマを立ち上げた(図1)。1)が健康状態に不安のある社員に向けたケアであるのに対し、2)は全社員の健康意識を高め、予防を目的とする取り組みである。
●施策1-1 身体面の取り組み
1)の健康リスク者のミニマイズ化では、生活習慣病などの「フィジカル」とストレスの影響が大きい「メンタル」の2つの分野についてリスク者をセグメントし、段階に応じてフォローする。フィジカルは健康診断の結果を基に4段階に分ける。
「最高リスクの社員数を減らすのと同時に、他のレベルの社員の状態改善に力を入れます。
最高リスクの層には、まず医師の受診を促します。そして産業医や保健師の協力の下、服薬や食事・運動面の改善などの指導を行います」
他の層の身体的なリスク者へも、主に食事と運動を中心とした保健指導を行う。
「この施策は手間がかかりますが、効果が上がれば医療費の削減が期待できます。何より社員が健康を取り戻し本来のパフォーマンスを発揮できるようになれば、生産性向上につながります」