寺田佳子のまなまな 第1回 女流囲碁棋士 吉原由香里六段に聞く 「プロの世界を生き抜くキメの一手」(前編)
寺田佳子さんの連載が帰ってきました!
さまざまな分野の達人に、「学び方」を学びます。
初回は2 号にわたり、「囲碁の世界」を、TVや雑誌でも活躍する「囲碁ヴィーナス」こと吉原由香里六段からレクチャーいただきます。
「プロ育成のツボ」対局です。
悔しさは自信の裏返し
最近、仕事帰りの秘かな楽しみができた。囲碁である。と、友人に言ったら、案の定「しぶい趣味ですねぇ~」ときた。
そんな方にはぜひ、囲碁サロンをのぞいてみてほしい。ビジネスパーソンたちが碁盤の上でクールに戦略を練り、スマートに戦術を披露する姿に、ビックリするに違いない。
さて、吉原六段のような女流棋士とは、なんと江戸時代から続く、歴史と伝統のあるキャリア制度だそうな。しかも囲碁は、男女格差のない、完全実力主義の世界である。
何しろ盤上の碁石の数で「白黒つける」という、まことにシンプルかつ客観的なルールで評価が決まる勝負ごと。そんな厳しい世界に吉原さんが飛び込んだのは、いったい何がきっかけだったのだろう。
「6歳の6月に始めたお稽古ごとは長続きすると言われますよね。私がその歳になったら習いごとをさせようと考えていた父が、碁盤と碁石とルールブックを買ってきて、本を読みながら教えてくれたのが始まりなんです」
数えの7歳、満6歳で初稽古をすると良い、と言ったのは能を大成した世阿弥である。その著『風姿花伝』で「その歳の子どもが何気なくやることに生まれ持った美点が見つかる」と述べているが、父親は既に、隠れた才能を見出していたのかもしれない。
一方、子どものほうはどうだったかというと、ほどなく近所の囲碁教室に通い始める。毎週まじめに行ったというから、きっと楽しかったに違いないと思いきや、