「LGBT・マイノリティへの配慮」
近年、注目されているテーマの1つ、「ダイバーシティ推進」。日本では、女性活躍推進や支援を意味することが多いが、本来の意味は、LGBT(性的少数者)や障がい者など、何かしらの配慮や支援が必要な人材の能力や視点も含めた多様性を経営に生かすことである。そのためには、どのような点に注意を払うべきなのか。働きたいのに働きづらい人の雇用や、受け入れる社会づくりを精力的に行う、アイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義氏に、ポイントを尋ねた。
7.6%が「存在しない」理由
まず先日、渋谷区が「パートナーシップ証明書」を交付したことで話題になっているLGBTについてお話しします。現在、国内におけるLGBT層に該当する人の割合は7.6%(2015 年電通ダイバーシティ・ラボ調べ)。およそ13 人に1人の割合です。ということは、こうした人たちと普通に出会う機会があるのが、自然な社会の姿なのです。
しかし、実際の日常生活で、LGBTだと思われる人を目にすることは、ほとんどないと思います。それは、彼らがLGBTであることを隠しているからです。カミングアウトはおろか、もし周りに知られたら奇異な目で見られたり、差別されたりするのではないかと、不安に思いながら生活しているのです。
一般企業でも環境は同じです。しかし私にしてみれば、性的指向の違いは、左利きと全く同じこと。「先天的にそうした性質を持っている」というだけです。たったそれだけのことで、採用を見送ったり対応を面倒くさがったりして彼らを不安にさせているのが、不思議でなりません。
性については諸外国のほうが寛容でオープンです。アイエスエフネットグループは現在海外8カ国で展開していますが、タイやフィリピンにも拠点があります。そこでは町を歩けばゲイやトランスジェンダーの方と普通にすれ違うほど、彼らは社会に溶け込んでいます。また私のキャリアは外資系のコンピューター会社からスタートしたのですが、1980年代当時、同業のIBMは既にLGBTのコミュニティーを結成していました。同社のLGBTの理解を促すポスターを見かけたことなど、今でも印象に残っています。
働きづらさの4つの要因
当グループでは「25 大雇用」と打ち出し、LGBTをはじめ、障がいのある方やメンタル不全者、あるいは障がい者と認められてはいないもののその傾向のある「ボーダー」と呼ばれる人たちを積極的に採用してきました(図1)。自分の力ではどうにもならない理由で、一般企業から相手にされない、あるいは強烈な働きづらさを感じるなど、「働きたいのに働けない」状況にある人たちばかりです。
彼らを働きづらくさせる要因として、大きく4点が挙げられます(図2)。
① 偏見・差別
日本の社会は、いわゆるマイノリティ(少数派)に対し、妙な先入観や偏った見方をする傾向にあります。
例えば、HIVウイルス感染者と普通に接している範囲ではエイズになる心配は全くありませんし、ユニークフェイス(病気やけが、先天的な理由で、顔が変形していたり大きなアザや傷が残ったりしている状態)は外見が普通と少し違うだけで、どちらも能力面には関係ありません。