巻頭インタビュー 私の人材教育論 志高く、考え抜けるリーダーは “任せる”ことから育つ
ノーリツは、給湯器や浴室をはじめとする住宅設備メーカーである。2009年から社長を務める國井社長は、経営不振の関連会社を立て直し、債務超過に陥りかけていた子会社も見事にV字回復させた。そして本体が赤字に転落した後に社長に就任し、直ちに黒字転換を成し遂げている。「企業再生の秘訣は、やる気に火をつけて人を動かすこと」と語る國井氏に、リーダー論や人材育成論を聞いた。
業界構造改革も視野に
―2016年は、中期経営計画の最終年度ですね。
國井
全社員で念願の営業利益100億円をめざしています。海外については既に射程圏内に入ってきましたが、国内は決して簡単に達成できるとは考えていません。少子高齢化が進む国内市場では、伸びる要素がなかなか見当たらないのです。これに対して海外市場については、まだいくらでも伸びると見ています。
―国内外では、今後の事業展開も大きく異なってくるわけですね。
國井
国内では、既に買い換え需要が売り上げの7割を占めています。したがって新規需要を開拓するためには、付加価値の高い新製品開発が欠かせません。同時に買い換え需要を喚起するためには、業界ぐるみでのアピールが必要です。今後は業界全体の構造改革も視野に入れて動くべきでしょう。
他方、海外では、日本のモノづくりの強みを十分に生かせると考えています。我々の技術力を提供し、マーケティングに強い現地企業とのM&Aを進めてシナジー効果を出していけば、いくらでも成長は可能です。実際、中国とオーストラリアで手掛けたM&Aでは、生産効率向上をまずは着実に進めています。
優れたエンジニアの条件
―成長の鍵を握るのは、どんな人材でしょうか。
國井
我々がメーカーである限り、研究開発と生産技術が扇の要であることは今後も変わりません。ここをきちんと押さえているからこそ、海外での展開を有利に進められるのです。優秀なエンジニアの育成は我々メーカーにとって永遠の課題です。
優れたエンジニアの条件は2つあります。第一は、自分で問いを立てられること。第二は、自分で立てた問いについて、寝ても覚めても考え続けられることです。
というのも、ビジネス上の問題には、学校の試験のような明らかな正解はありませんが、それでもどこかで決断を下さなければなりません。その際に自分を支えてくれるのは、問題について徹底的に深く考え抜いたという“自信”だからです。
―いわゆるグローバル人材の条件については、どうお考えでしょう。
國井
いかにもメーカー的な感覚だろうと思いますが、海外のどこに行っても、その土地のものを何でも臆せず食せることが大前提と捉えています。
現地工場など、海外のメーカーの現場は、外国人向けのレストランなどない場所がほとんどです。まずは、現地の人と同じものを食べられなければ、仕事をする前に生きていけません。もちろん言葉を話せることは必要ですからTOEICテストの受験料の補助や、アメリカでの研修制度なども整備しています。