TOPIC2 「マインドフルネスリーダーシップ・シンポジウム」レポート 日本企業における マインドフルネスの今、これから
グーグルやFacebook等の大手IT企業が取り入れ、日本でも注目を集めているマインドフルネス。8月には『世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方』(JMAM)が上梓され、その出版記念として「マインドフルリーダーシップ・シンポジウム」が開催された。今回は、当日の講演内容を紹介する。
はじめに
“マインドフルネス”とは、あちこちに散る意識や感情に振り回されず、“今この瞬間”に完全な注意を向けた状態のこと。また、そのための基礎練習としての瞑想も、マインドフルネスや、マインドフルネス瞑想と呼ばれる。イベントを主催したMiLIによれば、現在の状態を評価・判断せずに受け止め、今起きていることに十分に気づくことから、よりよい判断と行動を生み出す基盤になるのがマインドフルネスだという。
これまで主に宗教の世界で広がりを見せていた瞑想が、企業にも浸透し始めた大きな理由は、科学的な実証が行われるようになったからだ。例えば、瞑想実践者は未経験者に比べ、脳の特定の機能が活性化し、かつ、ある部分の脳の灰白質の厚みが増しているという。それらは健康促進や生産性向上、人間関係の良好化にも効果があることが近年の研究でわかっている。
今回のイベントでは、特別ゲストに元グーグルのピョートル・グジバチ氏を招き、グーグルでのマインドフルネスの受け入れ方、各企業事例の共有、マインドフル瞑想の実践が行われた。
【第1部】マインドフルネスがGoogleにもたらしたもの
ピョートル・フェーリクス・グジバチ氏 元グーグル ラーニング&ディベロップメント ヘッド
(インタビュアー)吉田典生氏 MiLI理事
企業文化が求めた“瞑想”
グーグルでマインドフルネスが取り入れられたきっかけについて、グジバチ氏はこう語る。
「グーグルでは、世界を変えるほどの大きな挑戦やイノベーションを起こすことが重要視されています。2倍とは言わず、10倍の成果を出す。成果や成功という言葉が何回も出てくる環境にいると、成功のために自分の心を鍛えることの重要性は、直感的に意識します」
導入前には、有名な科学者を呼び、社員に対して瞑想が脳波やイノベーションにどのような影響を与えるかという話を社内で講演してもらったという。脳科学や具体的な成果などの話から入ることで、理解しやすく、導入後のパフォーマンスも上がりやすくなる。その話の後に「具体的に何をすればいいのか」という流れで、個々人のマインドフルネスの受け入れに自然とつながったという。
また、導入方法についても「単純化した」とグジバチ氏。
「例えば、ミーティング前に全員で1~2分間、目を閉じて瞑想する。それだけで効果が得られ、浸透していきました」