人材教育最前線 プロフェッショナル編 「足らざるを知る」研修でめざす お客様から選ばれる携帯ショップ
携帯電話の卸売・販売および、携帯電話を利用したソリューションサービスを事業とするコネクシオ。2012年の企業統合を機に制定した理念には、「主体的に」、「フェアに」、「誠実に」、「チームワークのもとに」、「現場を起点に」などがある。この制定プロジェクトのメンバーでもあった人財開発課課長の平山鋼之介氏は、「みんなの想いを込めた理念が文化として浸透し、お客様から選ばれ続ける携帯ショップになれば」と話す。「現場で生かされる教育」を追求し、「足らざるを知る研修」と「学びの手段」の提供を実現しているという。
販売現場のマネジメント
携帯販売代理店として、ドコモやau、ソフトバンクのキャリア認定ショップの運営などを行うコネクシオ。平山鋼之介氏が同社に中途入社したのは2005年。家電量販店での携帯電話コーナーの営業担当に配属された。前職も通信関係の業界にいたが、販売の経験はゼロ。量販店の現場がどのような仕組みで動いているか、どうしたら売れるのか、知識も知恵もまるでなかった。
「自分以外の営業担当は現場たたき上げのメンバーばかり。売り場の状況を熟知しており、人脈も持っています。一方、私は何もかも手探り状態で現場を動かさなければならない。何よりまず現場スタッフの信頼を得なければと思いました」
そこで、仕事に関わることを手当たり次第に勉強した。特に商品・サービスについては「平山に聞けば何でもわかる」と言われるほどの知識を身につけた。例えば、当時、スマートフォンはまだ数機種しか販売されていなかったため、十分な知識を持った販売スタッフも少なかった。そうした商品を得意とすることで、頼られる存在となっていった。
現場を回すためのマネジメントスキルについても、さまざまな書籍を読んでは実践することを繰り返した。その1つが「ビジョンの設定」だ。
「“地域で一番店になる”など、わかりやすい店舗目標やビジョンを掲げ、そのために何をすべきかをスタッフ全員で考えるといった取り組みを進めました」。ビジョンの明確化はマネジメントの原理・原則である、という考えは現在も変わらない。
知識と意識を高める育成
営業担当にとって、販売スタッフの教育も業務のひとつである。
当時、現場では、各店舗での接客レベルの差が課題となっていた。基礎的な知識の習得については、店舗によって知識量にばらつきが出ないよう、入店前の集合研修などで標準化されていた。一方、接客スキルなどはOJTを通じて学ぶことが多く、現場の先輩スタッフや教育担当の力量に左右されがちだったという。
「優秀なリーダーがいる店舗では人が育ち、数字も上がる。しかし“現場任せ”という一面もあって、異動や退職でそうしたリーダーのノウハウは継承されづらく、会社としての武器になっていなかったのです」
入社から3年。常々育成への注力に必要性を感じていた平山氏は、20名前後いる営業担当者の中でリーダー職を与えられたことを機に、販売スタッフと営業担当者を育成するプロジェクトのメンバーとなった。
販売スタッフには、入店前研修に加えて、新たに入店数カ月後のフォローアップ研修と中堅スタッフ向けのブラッシュアップ研修をスタートさせ、各店舗での底上げを図った。一方、営業担当者向けには外部の協力を得て、マネジメントの基本を学び直すプログラムを取り入れた。その中で平山氏が強く認識したのが、“意識改革”だった。特に学習の必要性を感じていない人への働きかけには苦労した。
「そうした相手には、自分自身の今後のキャリアを考えてもらい、『実現のためにはこの仕事で信頼を築き、結果を残していく必要がある』と話しました」。将来の自分をつくるために今やるべきことは何か、という問いかけは、営業担当者の意識を変えるうえで有効だったという。