CASE 2 東京学芸大学附属世田谷小学校 小学生からタブレットでメタ認知!? 即時に意見を共有し 協働力と問題解決能力を育む
東京学芸大学附属世田谷小学校の教諭、河野広和氏は、iPadとリアルタイム授業支援アプリを使った授業を行っている。
ICTはどのように小学生の学習に寄与しているのだろうか。
また成人学習にも参考になる点とは。
●背景 教育現場で進むICT活用
学校教育ではタブレットや大型画面を使ったICT技術の導入が、政府主導のもと、2010年頃から本格的に進められている。
そうした中、2014年12月に河野広和教諭による、iPadとリアルタイム授業支援アプリを使った公開授業は、先進的だと報道された。
河野氏は、なぜ授業にiPadやアプリを導入したのだろうか。
「以前から、付箋と模造紙を使ったKJ法で、児童の意見を集約する授業を行っていました。ただ、自分自身が機械好きということもあって、何か新しいものを利用して、もっと効率よく、楽しく意見を吸い上げて共有することはできないかと考えていました。そんな時、2014年の3月ですが、あるテクノロジーの勉強会で『MetaMoJiShare』というアプリに出会ったんです」(河野氏、以下同)
このアプリでは、複数人で画面を共有して会議やプレゼンをしたり、ドキュメントをリアルタイムで共同編集したりすることができる。また、デジタルでありながらも「手書き」が大切にされており、河野氏はこのアプリを見た瞬間、“これだ!”と感じたという。
そして後日、社会科見学で体験した内容を学級新聞の形にまとめる授業で、早速このアプリを試してみたのだ。
河野氏が行う他の授業と同様※、学級新聞をつくるにあたっても、皆で集めた情報や写真を共有する。しかしそれをアナログで行おうとすると、全員が撮影した写真を、全員分印刷して配らなくてはならない。これは非常に手間とコストがかかる。
しかし、撮影したものをクラウド上で共有すれば、タブレットを介して皆で自由に閲覧できる。印刷も、必要な人が必要な分だけすればよい。何より、情報や写真を見ることで、他の人の視点に気づくことができる。
また、成果物もクラス全体でリアルタイムに共有・同時編集できるため、班に分かれて作業する場合でも、他の班の内容を確認しながら、自分の班の内容を変更することも可能だ。
なお、管理者画面では、全員の進捗状況が一見してわかるようになっている。
一方的な講義形式とは全く異なる授業である。
※河野氏の授業のほぼ全てで、全員にiPadを貸与している(1クラスは35名程度)。