OPINION3 男性中心の組織はこうすれば変わる 成果を公正に評価し、暗黙知を共有する
従来、日本の企業では、出世しようとすれば深夜残業と飲みニケーションが欠かせなかった。
同じ公式を育児中の女性にあてはめられるだろうか?
もちろん、答えは「ノー」だ。残業しなくても、飲み会に出なくても、女性がキャリアアップできるような制度づくり、組織づくりとは。
女性活躍やダイバーシティ・マネジメントなどに詳しい塚田聡氏が解説する。
日本の組織に特有の問題
女性のキャリア形成が難しい理由はいくつかある。育児中の女性は、男性社員と同じような働き方ができなくなる。出張、転勤、残業がしづらい、などだ。中でも最大の問題は、残業が困難になることだろう。もちろん、短時間で効率よく仕事をこなす女性は少なくない。それでも、長時間労働ができないと、“一人前”の戦力とみなされない風潮がある。
そこには日本企業の組織のあり方が密接に関わっている。
そもそも日本企業の雇用、組織のあり方は「メンバーシップ型」と類型化されている。正社員は契約上、職務も勤務場所も限定されない。彼らが中心メンバーとなり、企業という「共同体」を支えていることからこう名づけられた。
なぜ、メンバーシップ型組織が女性活躍を阻むのか。理由を改めて考えてみたい。
■メンバーシップ型の落とし穴① 業務の空白地帯がある
メンバーシップ型組織の特徴のひとつは、職務の範囲が曖昧なことだ。一応、社員はそれぞれ自分の役割、担当業務を持っている。にもかかわらず、誰の担当なのか曖昧で、チームとしての対応が求められる業務の「空白地帯」がある(図1)。これらの仕事は、周囲の人々の“頑張り”によって片付いていく。
しかし、短時間勤務、あるいは定時で帰宅する女性は、自分の業務の範囲を超えた仕事をなかなか担えないのが現実だ。
■メンバーシップ型の落とし穴② 残業が評価される
一方、上司の評価は、空白地帯の仕事をどれだけ負担したかに左右される傾向がある。自分の仕事をやり遂げるのは当たり前。組織やチームへのさらなる貢献こそが評価の源泉となる。
必然的に、労働時間が評価の尺度になりやすい。ノー残業デーが広がるなど、残業時間削減が叫ばれる昨今だが、それでも、毎日定時で帰る社員より、(必要性が高いかどうかは別として)やり手のいない仕事に深夜まで取り組む社員のほうが受けがいい(図2)。したがって残業できない女性は評価も上がりにくくなってしまう。