OPINION1 世代ごとにアプローチを変えた活躍推進 「長く働ける」「ステップアップできる」仕組みを
ライフイベント後の女性のキャリアが問題になっている。
「寿退社」という言葉が死語となりつつある今日だが、女性たちの意欲や能力を、活かしきれていない企業も多い。
出産、育児による離職を食い止めると共に、チャレンジを促すためにどんな働きかけが必要なのか。
働く女性のための雑誌『日経ウーマン』の元編集長であり、女性活躍推進に詳しい日経BP社 日経BPヒット総合研究所長・執行役員 麓 幸子氏に聞いた。
世代によって異なる女性の意識
女性活躍を推進するうえで、まず押さえておかなければならないのは、同じ女性でも働くことに対する意識に違いがあることだ。私は、世代によって大きく2つの層に分かれると考えている(図1)。
1つは、35歳くらいから下の年齢層だ。この世代の女性の多くは、いわゆる「失われた20 年」と呼ばれる時代に育ったこともあり、入社時から「一生働く覚悟」ができている。夫が一家の大黒柱として働き、妻が専業主婦になるという生活は現実的でないとわかっており、非常に堅実だ。
もう1つはベテラン女性の層だ。こちらの世代は違う価値観を抱いていることが多い。もちろん人それぞれだが、キャリアの初期段階から「一生働く覚悟」を持っていた女性は多くないのではないか。周囲の支援や環境に恵まれ、運よく働き続けられたというワーキングママもいるだろう。これまで働き続けてきた女性が、必ずしも「覚悟」がある人ばかりとは限らない。
若年層向けの対策
このように大きく意識の違う2層の女性たちに共に活躍してもらうため、どのような施策を行うべきなのだろうか。
ライフイベント前の若年層に向けては、「会社で長く活躍してほしい」という期待を伝えることはもちろんだが、それ以上に重要なのは、30歳までの初期キャリアにおいて、仕事の有意味感を与えることだ。キャリアの初期段階で仕事を通じて「しびれるような経験」をし、昂揚感、達成感、充実感を味わう。そのうえで上司や先輩から、会社の存在意義や仕事の意味を教えてもらえば、女性は仕事の醍醐味を教えてくれた企業に感謝の気持ちを抱く。「この会社で働き続けて貢献したい」と考えるようになるのだ。
つまり、ライフイベント後もモチベーションを保ち続けられる人材に育てるには、初期キャリアが重要なのである。
何も難しいことではない。男女の区別なく処遇し、適切な職務を与え、期待を伝えたうえで、鍛えればよいのだ。先述したように、今の20代、30 代の多くの女性たちは、「一生働く覚悟」ができている。問題は、受け入れる企業のほうに覚悟ができていないことだ。「女性だから易しい仕事を与える」「女性だから補助的な業務をさせる」といった扱いをすると、「長く働きたい」と考える優秀な女性ほど、その企業を見限って辞めてしまうだろう。
ミドル層向けの対策
一方、すでに中期キャリアにいながらなかなか力を発揮できていない女性や、ベテランといっても管理職になるわけでもなく、モチベーションが停滞気味の女性にはどう働きかければよいか。