TOPIC−2 KAIKAカンファレンス2015 レポート KAIKA賞事例に学ぶ、組織の卓越性をつくる取り組み
2015年2月、東京で「KAIKAカンファレンス2015」が開催された。
前身の「HRD JAPAN」の企業の人事・人材開発の情報共有の場としての役割はそのままに、経営や事業に直結する課題にまでテーマを広げ、さまざまな企業の先進事例を担当者から直接聞くことができるイベントである。
今回は3日間・全29プログラムの中から、KAIKA賞の獲得企業による事例発表講演の模様を取り上げる。
KAIKA賞とは
「KAIKA賞」は、企業や団体をはじめとする組織活動における、表彰制度の中の1つだ。KAIKA(「個の成長・組織の活性化・組織の広がり(社会性)」を同時に高める活動を指した造語)のプロセスが認められ、かつ図1の基準を満たす組織に贈られる。
「KAIKAカンファレンス」では、多くの事例発表を見ることができるが、その中には、KAIKA賞を獲得した3社による、取り組みの概要を発表するプログラムも用意された。その一部を紹介する。
伝統継承とDNA醸成、そして進化する「新社員教育制度」~竹中精神を基盤とした社会との対話~
竹中工務店 人事室 能力開発部 部長 川井敏広氏 課長 松尾典之氏
「棟梁精神」の継承
「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念に歩み続けてきた当社は、国内外の大規模建築物を数多く手がけてきた。そのルーツは、織田信長の家臣だった創業者が始めた神社仏閣の造営にある。そして当社の品質と技術は、「棟梁精神」の継承によって支えられている。
「棟梁精神」とは、棟梁としてお客様から全幅の信頼をいただき、構想・設計から施工、アフターフォローまで、全体で品質を保証する姿勢だ。協力会社を含めて多くの人の力が必要となる建築現場の中心を担う、竹中社員に根ざすべき精神といえる。
当社の人材育成は、棟梁精神の醸成を背景に、まずは一人前のプロになること、そのうえで管理者、経営者の視点を育むことを念頭に置いている。そして建築物という「作品づくり」を通じて、文化・社会・歴史への貢献と自己実現を図り、経営理念につなげていくという構造だ。
中でも、新入社員の育成はその後の成長過程に深く影響するので重視しており、新卒総合職を対象に1年間の「新社員教育制度」を設けている。1952年に導入された制度で、今年で63年目を数える。
1年間で3部門を経験
当社には「よい仕事がよい人を育て、よい人がよい仕事を生む」という考えが受け継がれているが、OJTは、「よい仕事がよい人を育てる」格好の場だ。
入社初年度は、4カ月ごとのジョブローテーションにより、原則3部門の職務経験を積む。さまざまな部門を経験することで、「竹中工務店の総合力」を体感するのが目的だ。そして、全員が当社の生産活動の根幹である作業所(建築現場)を必ず経験する。
配属先では、新入社員1人につき指導担当者を1人配置したマンツーマン指導が基本。指導担当者は新入社員と歳の近い、入社5年目以降の若手・中堅社員が担う。
指導担当者は、上司と相談しながら、自ら立案した教育計画に基づき指導する。新入社員の提出する日誌に目を通し、業務上の疑問点や悩みに対し必要なアドバイスを施すのも大切な役割だ。
とはいえ、指導担当者に全てを押しつけるわけではない。当社では「寄ってたかって」の気質が息づいており、職場ぐるみで新人の育成にあたる。
一方で、指導レベルの統一と配属先による指導のブレやバラつきを最小限に抑えるため、「履修項目チェックシート」の導入、配属先での課題設定とそのフィードバックの実施、年度末の修了試験の実施を徹底している。